太平洋戦争開戦のさい、日本軍が宣戦布告を経ずに攻撃を行ったことが非難されることがある。当時の国際条約では、開戦前に宣戦布告をすることが取り決められていたが、日本はこの約束を破ったのだ。
だが、これから攻撃しますよ、と敵に教えてしまったら、逃げられてしまうだろう。また、殺害予告をしなかったほうが罪が重くなるというのもおかしい。戦争とは人を殺すことだから、宣戦布告は殺害予告にあたる。ふつうに考えれば、殺人罪に殺害予告が加重されて、罪は重くなるはずである。
結局のところ、宣戦布告は形式的なものであるから、やらなかったからどうということもない。事前に宣戦布告を行うという取り決め自体が不合理なのである。
問1
しかし、日本が先に手を出したのは事実である。ゆえに、日本側に開戦の責任があるといえるのではないか。
答
喧嘩を売ったのはアメリカのほうである。ゆえに、アメリカの責任が大きい。
1941年11月、米国務長官コーデル・ハルは、日本側にハル・ノートとよばれる文書を手渡した。それは日本に対して、中国からの撤兵を要求するものだった。この要求をのまなければ国交断絶だ、というアメリカ政府の意思表示である。
この要求は不当である。なぜなら、中国はアメリカの領土ではないから。アメリカの主権は中国に及ばないため、日本が中国と戦争をしようが何をしようが、アメリカに口を出す権利はない。
にもかかわらず、日本に軍を引き揚げるよう要求したということは、アメリカ政府には、日本政府の主権を制限する意図があったといわざるをえない。つまり、日本をアメリカの支配下に置こうとしたのである。この要求を日本政府が拒否したのは当然であり、非難に値するものではない。
問2
しかし、日本軍による中国侵略は犯罪であり、これをやめさせようとしたアメリカ政府の要求は社会正義にかなうものである。ゆえに、日本に非があるといえるのではないか。
答
アメリカの目的は、中国をアメリカの支配下に置くことである。ゆえに、アメリカに正義はない。
そもそも、当時の日本とアメリカの海軍力は7:10の比率に制限されており、なおかつ、アメリカは大西洋と太平洋に戦力を二分していたから、実際には7:5で日本側が優勢であった。ゆえに、日本とアメリカが戦争になれば、アメリカが負ける可能性が高かった。アメリカがその危険をあえて冒し、日本に対して強硬な姿勢に出たのは、リスクに見合うだけのリターンがあったからだといえる。それが中国の支配権である。
ハル・ノートのいわんとしたことは、中国をアメリカによこせ、ということである。すなわち、アメリカの要求は私利私欲に出たもので、決して正義のためではない。ゆえに、必ずしも日本に非があるとはいえない。
問3
当時のアメリカは民族自決の原則を掲げていた。その原則にのっとって、中国人の独立を支援しようとしたのではないか。
答
中国の独立を支持するというアメリカの主張は嘘である。なぜなら、彼らには前科があるから。
19世紀の末にアメリカがスペインと戦争をしたとき、彼らはフィリピンの独立のために戦うと主張した。アメリカ人は、スペインの支配下にあったフィリピンの独立を支援するといったのである。だが、戦争が終わってみると、フィリピンはアメリカの植民地になっていた。そのほうがアメリカの利益にかなうからである。
このときのスペインを日本に、フィリピンを中国に置き換えてみれば、アメリカの本心がどこにあったのか、容易に推察できるだろう。
問4
だが、他国を侵略することが許されていいはずはない。日本は中国侵略に関して相応の制裁を受けるべきであり、国際社会を代表してアメリカがその意見を述べただけだ。
答
侵略に対する制裁が許されるのだとすれば、アメリカのフィリピン侵略に対する制裁として、日本軍によるフィリピンへの攻撃も正当化されるはずだ。しかし、このような結論はあなたの望むところではないだろう。
したがって、日本軍による中国侵略は、中国との関係においては違法であるが、アメリカとの関係においては違法ではない、と考えるべきである。
問5
アメリカは武力行使をしたわけではない。ハル・ノートという平和的な手段によって中国からの撤兵を訴えたのである。しかし、日本はこれに武力行使をもって答えた。ゆえに、日本に非があるといえる。
答
ハル・ノートは平和的というより、威嚇的なものである。
これにさきだち、アメリカ政府は、日本への石油の輸出を禁止する決定を行っていた。両者を総合すると、日本軍が中国から撤退しないかぎり、日本に対して石油の輸出は行わない、ということになる。
石油が輸入できなくなると、国民生活が立ち行かなくなる。当時の日本は、朝鮮や台湾などの海外植民地からお米を輸入していた。石油が入手できないと、船が動かせなくなるので、貿易はストップし、お米を輸入することができなくなる。そうすると、食料が足りなくなり、飢えて死ぬ人が出てくる。このように、石油の入手は日本にとって死活問題であり、石油がないと国民生活が破綻してしまうのである。
アメリカの要求は、日本国民の命を人質にとって、日本政府を脅迫するに等しいものであった。国民の命が惜しければ、我々のいうとおりにしろ、ということである。
軍隊は国民の命を守るために存在するものだから、こうした場合に武力行使に訴えることは正しい判断だといえる。
問6
アメリカが石油を売ってくれないのであれば、ほかの国から買えばよかったではないか。そうすれば、戦争を避けることはできたはずだ。
答
そのとおりである。
アメリカが石油を売ってくれないのなら、インドネシアから買えばよい。イランから買えばよい。
だが、インドネシアの石油はオランダ人のもの、中東の石油はイギリス人のものである。ゆえに、英米蘭の三ヶ国が共謀すれば、日本は世界中どこからも石油を入手できなくなる。そして、これら三ヶ国が示し合わせる可能性は十分にあったのである。
したがって、日本が平和を獲得するためには、連合国の植民地を解放する必要があった。インドネシアの石油をインドネシア人に返し、イランの石油をイラン人に返し、アジアのものをアジア人に返せば、日本が戦争をする必要はなくなる。そのために、日本軍はアジアの解放を目指したのである。
問7
話を戻そう。アメリカ人は、日本軍の真珠湾への奇襲攻撃を「卑怯なだましうち」だとして非難しているが、これはどう考えればよいか。
答
無意味である。
そもそも、武力衝突が起きる前から戦争は始まっている。お互いに相手の国にスパイを放ち、通信を傍受し、情報戦を行っているのである。アメリカ政府は優れた諜報能力を持っているので、手に入れた情報を注意深く検討すれば、日本軍の攻撃を事前に察知することは可能だったはずである。しかし何らかの事情により、その情報が活かされることはなく、アメリカ軍は日本軍の奇襲攻撃をもろに食らってしまった。
これは、情報戦よりもさらに上の戦略のレベルで、アメリカ側の判断に間違いがあったことを示している。すなわち、日本軍の戦略はアメリカ軍よりも優れていた。だからアメリカは負けたのである。
ただ、アメリカ人としては、自分たちが負けたことに納得できないので、日本人がなにか卑怯なことをしたのだ、と難癖をつけている。自分から喧嘩を売っておきながら、ボコボコにされているのだから、言い訳をしたくなる気持ちもわからなくはない。が、ただの負け惜しみなので、無視すればよい。
問8
いや、真珠湾攻撃は日本軍最大の失敗である。この卑劣な攻撃がアメリカ人の愛国心に火をつけ、眠れる獅子を呼び起こしてしまった。覚醒したアメリカ人は国を挙げて戦争に邁進し、圧倒的な破壊力で日本軍を粉砕した。この結果を予想できなかったということは、日本軍の戦略など児戯に等しいといえるのではないか。
答
では逆に尋ねるが、この戦いをとおして、アメリカは何を手に入れたのか。
アメリカは中国を手に入れることができなかったばかりでなく、フィリピンを失った。イギリス、オランダも広大な植民地を失った。
一方で、日本はアジアをアジア人に返すという目的を達成し、戦後80年の平和を謳歌することができた。高度経済成長も、アジアの資源が解放された結果として実現したものである。日本はこの戦争を通して大きな利益を手に入れた。
上に述べたとおり、アメリカの目的は中国を支配することだったので、それに失敗した以上は、アメリカの敗北と判断せざるをえない。また、オランダとイギリスが日本と戦った理由は、植民地を取り戻すことだったと考えられるが、これも失敗している。ゆえに、連合国は太平洋戦争に負けたと評価できる。
そして彼らの敗北は、日本軍が東南アジアを占領し、その独立を宣言した時点で決まっていたのである。ゆえに、そこから先の戦いは無意味な悪あがきにすぎない。連合国にとって最善の選択は、日本に降参して、戦争を早期に終わらせることだった。そうすれば、無駄な犠牲を避け、最小限の損失で事態を収拾することができただろう。そうした冷静な判断ができなかったことは、連合国に戦略的思考が欠如していたことの証拠である。
問9
否。アメリカの目的は侵略国家日本を打倒することであり、正義のために戦ったのである。断じて私利私欲のためではない。ゆえに、連合国がどれだけ犠牲を払おうとも、それは敗北の証拠とはならない。なぜならば、日本を倒すという正義を実現したからである。連合国は日本に勝ったのだ。
答
そのとおりである。
アメリカが勝利したと主張するためには、あなたのように論じざるをえない。私利私欲のために戦ったと仮定するならば、アメリカが敗北したという結論を避けることはできないからである。
実際、東京裁判において、連合国はそのとおりの主張をした。その嘘が彼らを縛りつけている。戦後、アメリカは世界の警察という役割を演じることになったが、それは東京裁判において彼らが描いた自画像そのものである。
アメリカはほんとうは負けたのだ。それを勝利に変えるためについた嘘が彼らを追いつめる。ドナルド・トランプは、アメリカの大統領として初めて、その呪縛から逃れようと試みている。世界の警察という役割はアメリカを苦しめるだけでなんの得もない。しかしそこから逃れるためには、彼らは自身の敗北と向き合わなければならない。太平洋戦争に負けたということを認めなければ、アメリカが世界の警察をやめることはできないのである。
トランプには荷が重い仕事である。アメリカ人に足りないのは敗北を認める勇気だ。
問10
アメリカが日本に負けたなど、世迷言にすぎない。歴史的事実として、アメリカ軍は太平洋各所で日本軍を撃破し、空襲によって日本全土を焦土と化し、最後には原子爆弾を投下してアメリカ軍の恐ろしさを全人類の記憶に刻みつけた。そのため、いまやアメリカに逆らおうとするものなど世界のどこにも存在しない。これこそアメリカの勝利である。
答
あなたのいうとおりだとすれば、アメリカ軍は、みずからの力を世界に誇示するためだけに、多くの日本人を虐殺したことになる。それは絶対悪であり、ナチス以下の外道である。
アメリカは裸の暴君である。正義の鎧を身にまとっているつもりだが、実際には何の衣裳も身につけていない。みんなその力におびえて、ほんとうのことがいえないだけだ。
問11
最後に、宣戦布告を行うことは国際条約によって義務づけられていたはずだが、その義務を怠ったことについてはどう言い訳するのか。
答
戦争にルールなどない。戦争を律する法そのものが悪である。
戦争のやり方を法律によって規制するということは、今後も継続して戦争が行われることを想定した立法である。したがって、そのような法の存在自体が国際平和を否定し、戦争を助長するものといえる。
我々は、戦争を規制するのではなく、戦争を禁止する法を作らなければならない。