記号心理学

情動は記号の一部であり、解釈項として理解できる。たとえば、お腹が空いているときに、あなたの目の前に美味しそうなりんごがあったとしよう。あなたは手を伸ばしてりんごを取り、食べる。このとき、あなたはりんごを見て食欲がわき、それに突き動かされて、りんごを食べたわけである。

このように、その個体にある特定の行動をとらせる原因となる情動を、動因と呼ぶことがある。しかし、動因はそれ自体で独立したものではなく、より大きな記号作用の一部だと考えられる。

この場合では、りんごという物が、一つの記号として機能している。りんごは、りんごを食べる、という行為のアイコンである。そして、りんごと、りんごを食べる、という行為を結びつけているのが、食欲という動因である。ここで、りんごは記号表現であり、摂食行動は指示対象であり、食欲は解釈項である。りんごを見てそれを食べる、という一連の現象が、全体として一つの記号作用を構成している。

もちろんこの分析自体、一つの解釈にすぎない。しかし、このようにパースの記号論を利用することによって、人間の心理だけでなく、動物の行動をも理解することができる。人間が解釈項の一種であるように、動物もまた解釈項である。このように、記号によって、人間と動物の行動を包括的に理解する枠組みを、記号心理学と呼びたいと思う。

また、意味ニューロンの仮説(「精神の本質」参照)は、記号心理学の神経学的表現であると言える。


もしかすると私は、パースの記号論を単純化しすぎているのかもしれない。あるいは、それを全く誤解しているのかもしれない。しかしそれも、私という解釈項が、パースという記号を解釈した結果である。そのような開かれた解釈項のつながりこそが、記号の本質であろう。

タイトルとURLをコピーしました