目的の追究

1 太平洋戦争はなぜ起きたのか

我々はこれから、日米戦争の原因について考察を行いたいと思います。原因とは、なぜ戦争が始められたのか、という理由であり、つまり戦争の目的です。ここでは特に、アメリカ側の戦争目的に焦点を当てたいと思います。

1.1 日米開戦前夜のアメリカ外交

まず、次のことを確認しておく必要があります。

真珠湾攻撃までの期間、アメリカ政府は、国民に対して、日本との間に友好的な関係が続いている、という発表を続けていました。そして攻撃の直後に、これは日本のだまし討ちである、という説明を行いました。

しかし実際には、それ以前から、アメリカ政府は日本に対する経済制裁を強めていました。さらに、真珠湾攻撃の二週間前に、実質的な最後通牒と言えるハル・ノートを日本大使に手渡していました。また彼らは、日本との戦争当事国である中国に対して、公然と軍事的な支援を行っていました。そのような行いは、決して中立なものとは言えず、戦争行為とみなされるべきです。

アメリカ国内では、戦争中の国家への武器の貸与は、戦争に加担するものではない、と考えられているようですが、そんなおかしな理屈はありません。アメリカ議会が武器貸与法を可決した時点で、日本との戦争は始まっていたと考えるべきです。

以上の事実から、アメリカ政府は、真珠湾事件以前に、公式な宣戦布告は行っていなかったものの、非公式に日本に対して戦争状態に入っていた、と言えるでしょう。

そもそもアメリカ政府には、宣戦布告を行う権限はありません。その権限は連邦議会が握っています。そのためアメリカ政府は、宣戦布告を必要としない範囲で可能なあらゆる手段を用いて、日本への敵対的行為を繰り返し、日本との対立を決定的なものにしたのです。

1.2 民主主義の敗北

では、なぜ彼らは、そのような振る舞いをしたのでしょうか。

アメリカ政府はこのとき、日本を相手に危険なチキンゲームに興じていました。その結果が日米の武力衝突であることは、彼らにも分かっていたはずです。したがって、アメリカ政府には、日本と戦争を始める意志があった、と考えざるをえません。さもなければ、アメリカ政府高官は、自分たちの行動の結果も予想できないような能無しだらけだった、ということになるでしょう。

しかし、当時のアメリカの世論は、戦争に反対する意見が優勢でした。つまり、政府の意志は、国民の意志に反していたと言えます。

国民の意志は議会に反映されます。そして、宣戦布告を行う権限は議会にあります。つまり、国民世論を味方につけなければ、アメリカ政府は議会に宣戦布告を行わせることができず、したがって、戦争を始めることができない、ということになります。

では、反戦に傾いていた国民世論を、戦争に賛成する方向へ変えるためには、どうすればよいでしょうか。

当時のアメリカ政府が出した答えが、相手に先に手を出させる、というものでした。つまり、日本が先制攻撃を行えば、国民も反撃を求めざるをえないだろう、ということです。それを実現するために、上述したような挑発外交が行われたのです。

そして肝心な点は、そのような政府の行いは、国民にばれてはいけない、ということです。世論を操作するためには、政府は、自分の意図を国民に悟られるわけにはいきません。それが暴かれた瞬間に、世論操作は失敗します。

そのためアメリカ政府は、国民の目から自分たちの行いを隠し、事実に反する発表を続けました。ゆえに、当時のアメリカ国民は、日米関係の実態についてほとんど何も知りませんでした。だからこそ「恥辱の日」演説を信じ込み、戦争へと向かったのです。

ある意味では、民主主義は虚偽によって成り立っています。アメリカ人にとって本当の敵は、日本ではなく、アメリカ政府だったのです。

2 アメリカの戦争目的

さて、はじめの問題に戻りましょう。

いったいアメリカ政府は、どのような目的のために、国民を騙してまで戦争を始めようとしたのでしょうか。

2.1 仮説1:人類の自由のため

それは、アジアの人々を日本の侵略から解放するためでしょうか。

しかし、それは違います。なぜならば、日本軍の仏印進駐は、アメリカによる蒋介石への支援ルートを遮断するために行われたものだったからです。つまり、実際には、アメリカ政府の行動が、日本による侵略行為の原因となっているのです。したがって、この説明は成り立ちません。

また、もしも本当にそれが目標だったのだとしたら、彼らはこの時点で、目標の達成に失敗していたと言わざるをえません。

2.2 仮説2:アメリカの国益

では、太平洋地域におけるアメリカ合衆国の利益を守ることが、その目的だったのでしょうか。

それも違うと言えるでしょう。この場合、ソ連の対日参戦が説明できなくなります。ソ連の参戦はヤルタ会談において、ルーズベルトの同意の下に決定されました。しかしそれは、ソ連とアメリカの対立においては、ソ連に有利な決定であり、むしろアメリカの国益を大きく損なうものでした。

ゆえに、アメリカ政府の目的は、アメリカの国益ではありえません。では、いったい何が目的だったのでしょうか。

2.3 無条件降伏とは何か

ここで、ルーズベルト大統領によって主張された、無条件降伏という要求について考える必要があります。私はこれを、基本的には日本に対する要求であったと理解しています。

一般的に言って、敵に対して降伏を勧告するときには、何らかの条件を付けた方が降伏は容易になります。これこれの条件は認めるから降伏しなさい、ということは、相手に対する譲歩を意味しています。逆に言えば、無条件降伏とは、相手との交渉の余地を認めず、ある意味では降伏そのものを認めない、という態度を表現していると考えられます。

つまり無条件降伏とは、文字通りに理解すれば、勝者への絶対的服従を意味しています。ルーズベルトは、この言葉をそのままの意味で使っていたと考えるべきでしょう。一方で、ソ連の参戦に関する合意は、アメリカの勝利を確実にするためと考えることができます。

すると、ルーズベルトの考えはこうなります。北からはソ連が日本本土に侵攻し、南からはアメリカ軍が上陸を始める。そのようにして、南北東西から日本列島を取り囲み、日本人の逃げ場をふさいで、一網打尽にしよう、ということです。

2.4 仮説3:明白なる使命

では、相手の降伏を認めず、交渉をするつもりもない、という条件の下で、アメリカの勝利とは何を意味していたのでしょうか。

それは明らかに、日本の植民地化、そして隷属です。もしかすると、民族浄化ということまで視野に入れていたかもしれません。それこそが、アメリカ政府の戦争目的だったのではないでしょうか。

ルーズベルトが人種差別主義者だったという事実も、この結論を裏付けます。彼は、白人国家であるアメリカとソ連が協力して、黄色人種である日本人をやっつけよう、という空想をしていたと考えられます。その空想に基づいて、太平洋戦争は始められました。

また、歴史的にもこの見解は支持されます。太平洋戦争は、アメリカ人が植民地時代から続けてきた、西部開拓の延長として理解できます。彼らは、インディアンを皆殺しにしながら、その居住地を奪ってきました。インディアンを平らげたあとで、次に標的にされたのが、日本だったというわけです。

3 結論

3.1 勝ったのは誰か

議論を整理しましょう。

太平洋戦争におけるアメリカ側の目標は、日本の植民地化でした。しかし、戦後日本の独立によって、その目標は達成不可能となりました。

一方で、日本側の目標は、東アジアの独立と再建でした。現時点において、その目標は達成されていると言えます。

したがって、太平洋戦争の勝者は日本であり、敗者はアメリカです。

3.2 永続敗戦国家

日米戦争と同時に、アメリカは、中国においても戦争を続けていました。そこでの目標は、蒋介石を支援して、中国に統一国家を建設させることでした。しかし蒋は、日中戦争では一時的な勝利を収めたものの、その後、共産党との戦いに敗れ、中国大陸を追い出されています。

つまりアメリカは、中国においても、所期の目標を達成できず、敗北していると言えます。さらにその後、ベトナムでも負けました。結局のところ、アメリカは、アジアにおいて一度も勝利を収めていません。彼らは負け続けています。

3.3 戦争の意義

アメリカが日本の独立を承認した時に、白色人種の有色人種に対する優位は、完全に否定されました。この点に関しては、日本の軍事力が、アメリカに代表される白人勢力を屈服させたと言えるでしょう。

日本人にとっては、あの戦争は無意味なものでした。人種間の平等という、当たり前の原則を再確認しただけだったからです。しかし欧米社会にとっては、それはかつてない大変革を意味していました。つまり、植民地体制の崩壊です。

植民地支配の消滅は、まるで自然に起きた出来事のように語られがちですが、実際には、多大なる犠牲を払った上で、日本人が達成した成果です。日本があの戦争を戦わなかったならば、欧米による植民地支配はいまだに続いていたことでしょう。それは、歴史を見れば明らかです。

しかし欧米人は、自分たちが犯した過ちを隠すために、歴史認識そのものを捻じ曲げようとしてきました。日本とアメリカ双方の戦争意図を歪め、歴史の姿そのものを変えようとしているのです。

4 嘘と真実

4.1 証拠はあるのか

最後に一つだけ、注意してほしいことがあります。アメリカの戦争目的に関するこれまでの議論は、推測に基づいている、ということです。アメリカの戦争目的が日本の植民地化であった、という考えを支持する直接的な証拠は、我々に入手可能な資料の中には存在しません。その点で、我々の考察は不十分だと言えます。しかし一方で、我々の推測を否定するような証拠も、現時点では存在しません。

どういうことかというと、アメリカ政府はいまだに、太平洋戦争に関係する資料の一部を公開していないのです。ルーズベルトの手紙や日記のような私的な文書、そして政府の意思決定に関する資料など、多くの資料が「国家安全保障上の理由」から非公開のままです。

しかし、あの戦争がなぜ行われたのか、という真実の追求は、現存する全ての資料を精査した上で為されなければなりません。ゆえに、日本人は、アメリカ政府に対して、太平洋戦争に関する全ての資料の公開を要求するべきです。

日本人にはそれを知る権利があり、また、二度とあのような戦争を繰り返さないために、それを知る義務があります。我々はアメリカ政府に対して、毅然とした態度で臨まなければなりません。

4.2 アメリカの安全保障

しかしながら、これまでの議論が正しいとすると、アメリカ政府の態度も理解できます。

彼らが資料を公開しようとしないのは、アメリカは負けた、という事実を隠蔽するためでしょう。我々は戦争に勝ったのだ、という嘘をつき続けるために、彼らはそれを隠そうとするのです。

アメリカはすでに、真実によって裁かれていることを知るべきです。

付記 西洋人と聖書

以上の話を西洋人に聞かせると、彼らはおそらく、自分たちはそれを知らなかったんだ、と言うでしょう。ルーズベルトにそんな意志があったなんて知らない、あの戦争にそんな意味があったなんて知らない、と。まるで、自分はそれを知らない、と言えば、どんなことでも許されると思っているかのようです。

この問題は、すでに新約聖書において指摘されています。ペテロという使徒はイエスから、「鶏が鳴く前に、お前は三度わたしのことを知らないと言うだろう」と予言されました。実際にイエスが捕まったあと、ペテロは誰に聞かれても「私はイエスのことなど知らない」と答え続けました。

この箇所におけるペテロの態度は、現代の欧米人にも受け継がれています。彼らは、自らの手で、自らをだまし続けています。自分は知らなかった、と言うことができるようにするために、わざと本当のことを分からなくしてしまうのです。そうやって真実を隠してしまえば、誰も責任を負わなくて済みます。最後に、我々はそれを知らなかったのだ、と言えば、無罪放免になるという理屈です。

真実を隠すということは、彼らにとっては、いいことずくめの魔法の杖のように思えます。しかしそれは、真実が暴かれるまでのことです。ひとたび真実が暴かれたならば、彼らは、膨れ上がった自分の罪と向き合わなければならなくなります。

イエスの死によって人類すべての罪が許されたというのは、後世の人々の勝手な妄想です。あらゆる罪には必ずその報いがあり、他人がそれを肩代わりすることはできません。この明白な事実を伝えていない点は、聖書の欠陥です。

参考文献

チャールズ・A・ビーアド「ルーズベルトの責任(上・下)」藤原書店、二〇一一年

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