日米安保を放棄せよ

東アジアの平和のためには、日米同盟の解消が必要である。現在中国が活発に膨張政策を進めているのは、アメリカに対抗するためである。つまり、反アメリカということが、中国にとって錦の御旗になっている。ゆえに、アジアからアメリカを追い出すことが、中国に対する最良の牽制になりうる。

方法は簡単で、我々は日米安保を破棄する、と言うだけでよい。アメリカ軍が日本に駐留する最大の根拠は、日本がそれを望んでいるから、ということである。ゆえに、我々が契約を破棄すると言えば、在日米軍の存在を正当化することはできなくなる。それでも駐留を続けようとするならば、日本はその非を鳴らし、国際社会に訴え出ればよい。

そもそも我々が米軍を養ってきたのは、共産主義に対する盾とするためであった。しかしすでに共産主義は滅びたのだから、これ以上アメリカ軍を養う理由はない。我々は彼らを傭兵として雇っていたようなものなので、必要がなくなったら契約を解除すればよい。

ここで、中国はまだ共産国家ではないか、と言う人がいるかもしれない。しかし、あれはただの中国王朝である。儒教が共産主義に代わっただけで、やっていることは昔から何一つ変わっていない。彼らにとって、イデオロギーは出世のための手段でしかない。その中身は何でもよいのである。したがって、アジアにアメリカ軍はもう必要ない。

防衛力に不安があると言うなら、巡航ミサイルや空母くらいは作っておけばよい。三菱などが喜んで作るだろう。こういった装備は別にハリボテでも構わない。どうせ核戦争の役には立たないのだから。

では、その後はどうすればよいだろうか。今まではアメリカ軍が、まがりなりにも国際秩序を維持してきたと言える。もちろん、火種を作ることの方が多かったかもしれないが、我々は、アメリカ軍がいなくなった後の国際秩序を考えなければならない。唯一可能な答えは、天皇を中心とした朝貢体制である。

福岡市博物館に、漢委奴国王と記された金印が保存されている。これは、九州を治める首長が、漢の皇帝から政治的な権力を保証されたことを示すものである。このように、それぞれの地域を治める政府にとって、皇帝からその存在を認められることが、権力を正当化する根拠になっていた。それと同様に、天皇陛下がその存在を承認することによって、各国政府の統治が正当化されるような国際秩序を作る必要がある。それが、東アジアにおける最も自然な政治秩序だろう。

皇帝は一人でなければならない。天下に二人の皇帝が並立することがあってはならない。むかし中国と日本には、それぞれ独立に皇帝が存在していた。それでも、日中の政治的な交流はそれほど活発ではなかったので、この問題が表面化することはなかった。しかし近代になって、蒸気機関や内燃機関が発明されると、中国と日本は海を越えて緊密に結びつくことになった。そうすると、二人の皇帝の存在が強く意識されるようになる。

日本は天皇制を堅持したが、中国は皇帝を捨てた。これによって、アジアにおける皇帝は一人に定められた。なぜ中国人が皇帝を捨てたのか、その理由は明らかではない。満洲皇帝を廃する代わりに、漢人の皇帝を擁立することもできたはずである。王制と民主制が両立しうることは、様々な国家の例からすでに明らかだった。だが、彼らはそうしなかった。というより、できなかったのだろう。

中国に皇帝が出現すれば、必ず日本の皇帝と競合することになる。しかし中国の皇帝が、日本の皇帝よりも優れていると主張することはできない。なぜならば、中国は日本に負けたからである。日清戦争の敗北は、日本の中国に対する優位を確立すると同時に、日本の皇帝が中国の皇帝よりも優れていることを証明する意味もあったのである。ここに皇帝の統一が実現された。

そしてこれは、日本と中国の関係のみに収まらない意味を持っている。大清皇帝は、中国皇帝であると同時に、モンゴル・満洲両族を束ねる大ハーンでもあった。そのハーンを日本の天皇が打ち倒したということは、天皇には、大ハーンの位を継ぐ資格もあるということを意味している。これは、その後のロシアとの衝突を考える上でも興味深い。

ロシア帝室はモスクワ大公に起源をもつが、モスクワ大公とモンゴルの間には深い関係がある。ある意味で、ロシアの皇帝は、チンギス・ハーンの権威を継承することで、自らの権力を正当化していたのである(参考文献参照)。そのロシア皇帝と、満洲皇帝を打ち破った日本の天皇が、奇しくも満洲の地で衝突することになった。結果は日本の勝利であり、その後ロシア皇帝は廃された。ここでも天皇は、ハーンの位を継ぐ資格があることを示して見せたのである。

さて、以上の考察から分かることは、天皇は、中国と日本だけではなく、全ユーラシアを統治する権利を持つ、モンゴル皇帝の正統な後継者だということである。

参考文献

『モンゴル帝国と長いその後 (興亡の世界史9)』杉山正明、講談社、2008年

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