歴史とは何か

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歴史に「もしも」は禁物だとよく言われるが、それは間違いである。ある個人や組織が、なぜその行為を行ったのか、ということは、もしもその行為を行わなかったならばどうなっていたか、ということを考えることなしに、理解することはできない。

たとえば、一九一〇年に日本は韓国を併合したが、それはどうしてだろうか。

このことは、もしも日本が韓国を併合しなかったならば、どうなっていたか、ということを考えれば分かる。おそらくその場合、韓国はロシアの植民地になっていただろう。そうすると、日本海を挟んだ大陸側は全てロシアの勢力圏になってしまい、日本の国防にとって危機的な状態になってしまう。そのような事態を防ぐために、日本は韓国を併合したのである。

もちろん、そうならなかった可能性もある。韓国軍が自力でロシア軍を撃退する可能性もあったかもしれない。しかし、当時の日本人はそう考えなかったし、私も、そのような可能性はほとんどなかったと思う。

ふつう人は、未来のことを予測したうえで行動する。この後こうなるかもしれないから、今のうちにこれをしておこう、というふうに、可能性を考えることで、何をすべきかを決めることができる。たとえば、雨が降るかもしれないから、傘を持っていこう、というように。つまり、「もしも」という考え抜きに、人は自分の行動を決めることができない。

したがって、歴史というものが人間の行為の積み重ねである以上、「もしも」という考えなしに、歴史を理解することはできないのである。歴史は「もしも」の学問であり、また、そうでなければならない。

2

2.1

韓国は、日露戦争に勝利することで、日本が勝ち取った戦利品である。これに関して、我々は誰に恥じる必要もない。

もちろん、我々が韓国で行った同化政策は誤りであったし、韓国人の自治を認めなかったことも誤りであった。それが人々に与えた影響を、忘れてはならない。我々は韓国人から言葉を奪ったのだ。

一方で、ロシアの膨張を防ぐことができたのは、日本にとって大きな成果であった。ロシアとの関係を考えるならば、韓国を手放すという選択肢はありえなかった。

2.2

また、ロシアが韓国を侵略しないという可能性はなかったのか、と言う人がいるかもしれない。

そんなことはあるはずがない。だいたい、世の中の悪いことはみんなキリスト教徒が作ったのであって、彼らの好きにさせておいたら、どんなにひどいことになるか知れたものではない。

現代の日本人は、イギリス人やフランス人を天使のようなものだと思っているらしいが、そんなわけはない。彼らは、自分の利益のためならどんなことでもするような獣だったのであり、いまでも幾分、そのような部分が残っている。我々が大東亜戦争によってアジアを植民地支配から解放するまで、彼らはアジア人の生き血をすすって生きていたのである。あの戦争によって、彼らも少しは懲りたようだが、まだ本当の意味で反省しているわけではない。

欧米人は自分の間違いを指摘されると、相手の落ち度を責め始める。相手の落ち度を見つけたら、それで自分の間違いは許されると思っているのである。だからいつまでも反省しない。日本人が欧米の植民地支配を非難すると、彼らは日本の侵略戦争の話を持ち出す。しかし、あの戦争は植民地支配を打ち破るためのものだったので、そもそも欧米人が植民地を作らなければ、我々があんな戦争をする必要もなかったのである。

欧米人には、原因と結果のつながりを認識する能力が欠如しているようである。そして最後には、神様とかAIとかの不思議なものが現われて、全ての問題を解決してくれると思い込んでいる。お気楽な連中である。だが、現実はそんなに甘くない。いずれツケを払うときが来るだろう。

日本人は、ひとり日本のためにのみ戦ったわけではない。日本などという、ちっぽけな国のために戦ったわけではない。我々は世界の平和のために戦った。正義のために戦ったのである。

2.3

また、西洋人がときどき示す、我々が優れた文明を教えてやったのだから、あなた方は我々に感謝すべきだ、という態度も、心得違いである。

我々は確かに、彼らがもたらした科学技術から多くを学んだ。だから我々は、ニュートンやアインシュタインに敬意を払う。しかし、だからといって、ヒトラーやルーズベルトにまで敬意を払わねばならない理由はない。

他方で、彼らがもたらした政治思想や哲学は、我々の社会に混乱を招いただけであった。それは社会の進歩に対して、何ら本質的な寄与を行っていない。実際、西洋文明と接触して以来、我々は何度も大きな戦争に巻き込まれてきた。客観的に見れば、それが我々に与えた恩恵よりも、損害のほうが圧倒的に大きい。

つまり西洋文明は、我々にとって災厄以外の何物でもなく、感謝すべき理由など少しもない。むしろ、我々が西洋人を正しい道へと導いてやったのだから、彼らの方こそ、我々に感謝するべきである。西洋人の考えはかくも混乱しており、事実を全く誤認している。

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