新型ウイルスについて(5)

1

新型ウイルスに関して、人命と経済とどっちが大事なのか、という問いを発する人がいる。しかし、それはナンセンスである。

たとえば、あなたが着ている服を作ったのは誰なのか、あなたは知っているだろうか。服を作る過程について考えると、まず綿花を栽培する農家がいる。それを収穫して糸を紡ぎ、布を織る人がいる。その布を裁断して服を作る人がいて、それを小売店まで運ぶ人がいる。そしてそれを売る人がいるので、あなたは店まで服を買いに行って、服を着ることができるわけである。

この過程全体が経済である。つまり経済とは、人間の生活そのものであり、経済がなければ、我々は生きてゆくことができない。人命と経済は車の両輪であり、どちらかがなくなれば、両方ともダメになる。ゆえに、これらを天秤にかけることが誤りである。

現代人の経済に対する理解は非常に歪んでおり、未熟なものである。経済とは、金を稼ぐことではなく、生活することである。

2

また、マスクやソーシャルディスタンスなどの試みによって、感染を回避しようとする運動が起きている。それは全く無意味とは言えないが、効果は限定的だろう。

たとえばマスクをすることで、感染を99%防げたとしよう。しかしそれは、きょう一日の話である。今日感染を防げる確率が99%で、明日も防げる確率が99%だとするなら、二日連続で感染を防げる確率は、99×99で98%になる。これが三日、四日と長引けば確率はさらに下がり、期間が長引くほど、感染を回避できる確率は限りなく0に近づく。

感染の拡大を遅らせることは、病院の負担を減らすためには必要かもしれない。しかし、感染のスピードが遅くなればなるほど、収束までの時間は長くなり、結果的に、経済への影響はより深刻化するだろう。以上のことから、私は、感染の拡大を抑止するべきではないと考える。

3

新型ウイルスの発生源に関して、中国の研究所が原因ではないか、という噂が飛び交っている。たとえそうだとしても、べつに中国人がウイルスを作ったわけではないだろう。野生動物から採取したウイルスが流出した、という程度のことだと思う。

これは憶測でしかないが、原因の一つは地球環境の変化である。

野生動物にはそれぞれ生息する環境があって、一つの環境に適応した動物が、別の環境に移ることは難しい。いま、温暖化によって地球の気候が変化しているのだから、生き物が生息する環境も、少しずつ変化しているはずである。その変化に合わせて、生き物の移動が起きているのではないか。

温帯に住む生き物は温帯の気候に適応しているので、気温が高くなれば、より涼しい地域へと移動するだろう。そのように、生物の生息域の変化、つまり生態系の変化というものが、地球規模で起きているはずである。それによって、人間と接触する動物種も変化しつつあるのだとすれば、これまで人類が経験してこなかった、新しいウイルスを持つ動物と接触する機会も増えることになる。それが新型ウイルス発生の原因かもしれない。

4

この流行が終わった後に、社会を元通りにすればそれでよいのかといえば、そうではないだろう。社会そのものの変革が必要である。

人口の密集が、感染症対策を難しくしていることは事実である。都市への人口の集中と農村の過疎化が、社会の脆弱性を高めていると言える。感染症が起きた後で、その対策を行うのではなく、そもそも感染症に強い、あるいは様々な災害に強い社会を作るべきではないか。

人間の移動も、感染症拡大の原因の一つである。感染症に限らず、移動の問題は非常に重要であり、その影響は多岐にわたる。私見では、これは温暖化や人口の問題と密接な関わりがある。人間の移動をある程度制限することが、これからの社会では必要になってくると思う。

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