試験と能力

最近、大学試験の改革が世間をにぎわしている。より正確な試験を求める気持ちも分からなくはないが、大事なのは試験ではなく授業の中身である。

教育の目的は人間を育てることであって、人間を測ることではない。よい授業を行って、よい人材を育てることができれば、それでよいのである。試験は適当でよい。試験ばかりに気を取られて、質の高い授業が受けられなくなれば、本末転倒である。

おそらくこれも能力主義の弊害の一つである。一人ひとりの人間に能力というものが備わっていると思うから、それを正確に測らなければならない、と考えるようになる。能力に応じて人間が評価されねばならない、という公正さに対する感覚が、正確な能力の測定を求める心理につながっているのである。

しかしテストの方法をいくら工夫したところで、人間の能力が向上するわけではない。それよりも授業の内容を充実させたほうがよい。限りある人的資源をどのように利用すべきか、ということを初めに考えねばならない。

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