小論集2

VII. 芸術と模倣

全称命題と単称命題

全称命題と単称命題の区別は、現代論理学の基本である。アリストテレスはこれを厳密に区別できていなかった、という指摘があるが、それはおそらく正しいだろう。普遍と個物の関係を把握することは常に難問であり、そもそも論理学で扱いきれる問題ではない。 しかし、この区別には基本的な重要性がある。そして、哲学者や思...
思想記号論
VII. 芸術と模倣

歴史と言葉

1  歴史書に書かれていることは、基本的に真実だと考えるべきである。もちろん、複数の歴史書の記述が食い違っていたり、あるいは歴史書の記述が考古学的な資料と矛盾していたならば、真偽を疑うべき根拠となりうる。しかしそういう証拠がない場合には、むやみに書物を疑うべきではない。 本当のことを書き残したい、と...
政治文化歴史
VII. 芸術と模倣

婆子焼庵

婆子焼庵という公案がある。 あるところに一人の老婆がいた。彼女は信仰心が篤く、庵に住む修行者の世話をしていた。世話を続けるうちに、彼女はその修行者が気に入り、自分の娘と娶せようとした。だが仏道の妨げになるということで、修行者はそれを断った。老婆は怒り、庵に火をつけて修行者ごと燃やしてしまった。 とい...
仏教
VII. 芸術と模倣

運について

1  ある出来事の結果として、何が起きるか分からない、予想ができない、というときに、我々は運という言葉を使う。 たとえばコインを投げたときに、裏が出るか表が出るか、あらかじめ予想することはできない。そこで、表が出るに違いない、と思い込んでいると、いざ裏が出たときに困るわけである。そういう人は、運に翻...
宗教思想
VII. 芸術と模倣

夫婦別姓

1  日本は今でも夫婦同姓だが、夫婦別姓を認めるべきではないか、という意見が多く聞かれるようになった。 そもそも名字とは何かといえば、おそらくこれは家の名前だろう。個人の名前とは別に、親から受け継がれるものなのだから、家の名前と言ってよいと思う。そうすると、妻の名字が変わるかどうかということは、妻が...
ジェンダー中国文化
VII. 芸術と模倣

芸術と模倣

1  芸術とは自然の模倣である。西洋人にとっては、それは自然の輪郭を模倣することである。絵画や彫刻はそれを理想としている。一方で東洋人にとっては、それは自然の運動を模倣することである。そしてこちらの方が、人間の原初的な認識に近いと考えられる。 自然を認識するとき、我々はまず動きを認識している。そのも...
アニメーション文化
VI. 知識人

日本の戦略

1  日本政府はアメリカの言いなりになっている、とよく言われる。実際その通りである。それはなぜかといえば、グアムに米軍の基地があるからである。アメリカ政府は、その気になればいつでも日本を空爆できる。ゆえに、日本はアメリカに従わざるをえない。 サイパンの陥落は、ある意味で日本の降伏以上に重要な出来事で...
政治軍事
VI. 知識人

自由主義と疎外

1  資本主義は必ず外部を必要とする。したがって、それは奴隷制と相性が良い。なぜならば、奴隷は常に市民社会の外に存在するからである。しかし、資本主義は階級社会の原因ではない。原因はリベラリズムである。  自由主義の本質は、自由意志の肯定である。それは人間の自由な意思を尊重し、それを否定し制限する要素...
思想政治
VI. 知識人

動機がない犯罪

1  すべての犯罪には必ず動機がある。動機がない犯罪もありうる、と主張する人間は、彼自身の犯罪を隠そうとしているだけである。犯罪というと大げさだが、良心の呵責をごまかすために、そういうことを言うのである。 彼が言いたいのは、誰もが犯罪を犯しうる、ということであり、さらに言えば、誰もがすでに犯罪を犯し...
思想社会
VI. 知識人

敬語について

日本語で敬語を使おうとする場合、文法に強い制約がかかる。 たとえば、天皇陛下の仕事はこれこれである、という文を考えてみよう。この文は、このままでは敬語にすることはできない。これを敬語にするためには、天皇陛下はこれこれの仕事をなさる、あるいは、おやりになる、というように、文の構造を変えなければならない...
天皇文化