STAP細胞

私はSTAP細胞の発表を聞いたとき、iPS細胞があるなら、STAP細胞があってもおかしくない、と思った。

細胞の万能化の仕組みはよく分かっていないので、そもそも、iPS細胞がどうして上手く行くのか誰にも分からない。だから、同じような万能化であるSTAP細胞の話が出てきても、そんなことはありえない、とは誰にも言えなかったのである。

科学というものは、原理があって初めて成り立つのだが、現在の生化学の分野には原理が存在しない。iPSはたまたま上手く行ったように見えるし、それならばSTAP細胞があってもおかしくない、ということになる。

しかし、もしも、生化学の分野に指導的な原理があったならば、その原理に照らして、どのような現象は起こりえて、どのような現象は起こりえないか、ということがあらかじめ分かるはずである。そういう原理が存在しないので、どんなことでも起こりえると考えるしかないし、ある現象が起きるか起きないかは、実験をしてみないと分からない、ということになる。だが、そんなものは科学とは言えない。

セントラルドグマはもう古い。それは半世紀以上も前に作られた理論であり、最近になって発見されたエピジェネティクスという現象を、十分に説明できているとは言えない。そういう古い理論をいつまでも後生大事に信じているから、STAP細胞のようなみっともない騒ぎも起きる。あの騒ぎは小保方博士一人の責任ではなく、生物学者全体の責任であり、職務怠慢である。

我々は、セントラルドグマに代わる、新しい原理を見つけなければならない。それが、これからの生物学者の仕事である。

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