ウイルスの進化論

ウイルスの進化を考えるときに、何が淘汰圧として働くか、ということが問題になる。あるウイルスが、別のウイルスと競争関係にあり、自分の子孫をできるだけ増やそうとするならば、彼は何をすべきか。彼がすべきことは、より多くの人間に感染し、より多く繁殖の機会を得ることである。そこで、いかにして人間を確保するか、ということが、ウイルスにとって喫緊の課題となる。

二種類のウイルスA,Bがいたとしよう。Aが感染した人間には、Aに対する抗体ができ、再びAに感染することはない。ここでもしも、Bのウイルスに対して、Aによってできた抗体が反応してしまうならば、Bは、自分が繁殖する機会をAに奪われたことになる。そこで、BがAを出し抜こうとするならば、どんな手段が考えられるだろうか。

一つは、Aよりも先に多くの人間に感染することである。Aの抗体がBに反応するということは、Bの抗体もAに反応する可能性が高い。よって、Bがより多くの人間に感染するほど、Aの繁殖の機会を奪うことになり、Bにとっては有利となる。

もう一つの手段は、Aに対して作られた抗体が反応しないくらいに、Bが進化することである。AとBが同じウイルスから進化したのだとしても、種分化の程度がさらに進めば、Aの抗体がBに反応しなくなる可能性は十分にある。よって、Bが進化のスピードを速めることで、感染可能な人間の数を増やすことができる。

ここで、もしも人間の側が、Bが進化するのに都合のよい状況を作り出してしまうならば、AとBの進化競争は長引くことになるだろう。そうなれば、感染者は増えるばかりである。ゆえに、我々がすべきことは、AとBの競争が早期に決着するような状況を作ることである。つまり、我々はまず覇権ウイルスを作り出す必要がある。感染対策はその後で考えればよい。

参考リンク

ガラパゴス化する新型ウイルス
ウイルスの生態系

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