ミラーニューロン

 同種の個体の行う動作を模倣できるということは、その個体にとって適応的でありうる。たとえば、他の個体が特殊な行動によって餌を獲得するのを目撃した後で、その行動を模倣する能力を持つということは、個体の生存に有利に働くだろう。
 そして、このような模倣を行うために必要なことは、他個体の動作を、自分自身の身体の動作と比較することができる、もっと言えば、自他の動作を同一のものとして認識できる、ということではないだろうか。また、同一の行動は、それが自分が行ったものであれ、他者が行ったものであれ、脳内で同一の表象を持つ、ということはありえることである。

 たとえば、視覚情報だけによって、自分の腕と他人の腕を区別することは難しいと思われる。少なくとも、それらを見間違えてしまうことはありえるだろう。
 そこで、自分の腕がある動作を行っているのを見たときと、他人の腕が同じ動作を行っているのを見たときとで、脳内で同一の神経活動が生じている可能性は十分にある。そして先に述べた理由から、自他の動作に関して同一の認識を持つことが、個体の生存にとって有利に働くものでもあるとするならば、そのような認識を持つ傾向が遺伝的に固定される可能性は高いといえる。
 つまりミラーニューロンの存在は、個体の生存に有利だから、という理由で説明がつくだろう。

<参考>
精神の本質

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