漢字による平和

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ヨーロッパの歴史は戦争の歴史である。ヨーロッパ全土で戦争が途切れたことは一度もない。

一方で、東アジアの歴史は平和の歴史である。もちろん、中国でも戦乱は頻繁に起きている。各王朝の末期には全土で反乱が頻発し、内乱状態に陥るのが常である。しかし、その後には必ず統一王朝が樹立され、長い平和の時代が続くことになる。日本でも同様である。室町末期から戦国時代は戦乱が頻発したが、その後に江戸幕府が成立し、人々は長い平和を享受した。アジアにおいては、平和が社会の基本である。

現代の人々は、ヨーロッパの歴史を基準にして人類の歴史や社会を理解しようとするが、それは大きな間違いである。ヨーロッパほど戦争の多い地域はなく、この地域を基準にして物事を考えることは非常に危険である。

たとえば、戦争によって人類の技術は進歩してきた、と言う人がいる。しかし、製紙法やコンパスは中国で発明された技術だが、とくに戦争と関係があるわけではない。平和な時代でも人類の技術は進歩するのであり、戦争がなければ進歩がないわけではない。このような単純な間違いも、ヨーロッパの歴史を基準とすることから生じる。

現代のヨーロッパにおいては、例外的に平和な時代が続いている。それは日本のおかげである。近現代のヨーロッパにおける闘争の主原因は、植民地を巡るものであった。どの国がどれだけ多くの植民地を獲得できるか、という競争が、ヨーロッパに紛争を引き起こしてきた。ところが大東亜戦争の結果、大英帝国は崩壊し、オランダの植民地帝国も消失した。それによってヨーロッパには争いの種がなくなり、平和な時代が訪れたのである。この点で、ヨーロッパ人は日本に感謝すべきだと言える。

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また、東アジアの平和には明確な理由がある。戦乱の時代は別だが、一度平和が確立されると、日本や中国、朝鮮の間にはほとんど紛争は起きなかった。

その理由は漢字にある。漢字は普遍的なコミュニケーションツールであり、言語の壁を越えて意思を通じることが可能になる。日本人と朝鮮人は、話し言葉は全く違うが、昔はどちらも漢字で文章を書いていた。ゆえに、漢字を使えば意思を伝えることが可能であった。このように、お互いの考えを理解し合うことができたということが、東アジアに長期的な安定をもたらしていたのである。

そのように考えると、現在の東アジアの国際関係がギクシャクしている理由も簡単に説明がつく。漢字を使わなくなったからである。各国が漢字を捨てたために、互いの意思を理解する手段がなくなり、平和を維持することが難しくなった。ゆえに、東アジアにおいて恒久的な平和を確立するためには、漢字の復権が不可欠であると言える。

朝鮮人は戦後、漢字を使うことをやめた。ベトナム人は植民地時代に漢字の使用をやめた。日本も戦後常用漢字表を定め、漢字の使用に制限を設けた。本場の中国に至っては、訳の分からない記号を使って漢字の代わりとしている。これでは東アジアに紛争が起きるのは当然である。

我々がこれからすべきことは、漢字を学びなおすことである。日本は常用漢字表を廃止し、自由に漢字を使えるようにすべきである。同時に朝鮮や中国でも漢字の使用を見直してゆくことができれば、東アジアにかつての平和を取り戻すことができるだろう。

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私が秘かに考えるのは、中国の国家主席が、天皇の下に朝貢に来るように仕向けられないか、ということである。もちろん朝貢といっても、いまの日本が中国に与えられるものは何もないので、かつての朝貢とは全く異なるものになる。

しかし、中国のトップが天皇に臣下の礼をとるようになれば、他の諸国もそれにならうようになるだろう。もちろん、日本の総理大臣も天皇の臣下であって、その点は中国政府と変わらない。そのような秩序を、東アジアの人々が協力して作り上げてゆくこともできるのではないか。

最近再び日本政府の中に、中国と戦争を始める準備をしようという動きが出てきた。イージスアショアの撤回に伴い、自衛隊は敵基地攻撃能力を持つべきだ、と考える人が増えてきた。しかし中国も、日本と戦争をしたいとは思っていないだろう。なぜならば、儲からないからである。戦争は金がかかる割に利益は少ない。中国は基本的に商人の国なので、儲からないことはやりたくない。ゆえに、戦争を避けることができればそれが最も良いという点で、日本人と中国人の考えは一致するはずである。

ただ中国人にも弱点はあって、彼らは正義に弱い。つまりイデオロギーに弱い。現在の中国は南北朝時代に似ていて、南北両朝が自分が正統だと主張している。北は共産党、南は国民党である。こうなるとイデオロギーの争いになってしまい、中国人自身には収拾がつけられなくなる。どちらかがどちらかを滅ぼすまで、戦いを止めることができないのである。

さらにまずいことに、このイデオロギー闘争にアメリカまでが関与しようとしている。これが日本にとって一番の危険要因である。アメリカが台湾を守るために中国と戦争を始めれば、日米同盟の下で日本もそこに引きずり込まれてしまう。中国と台湾だけでも厄介なのに、アメリカまで絡むともはや火薬庫のようである。

そのような事態が起きる前に、日本は日米同盟を解消すべきかもしれない。それは中台衝突、さらには米中衝突の抑止力となりうるし、日本が戦争に巻き込まれることを未然に防ぐことにもなる。そして、現在のアメリカが主導する世界秩序に代わる、新しい世界秩序を提示しなければならない。それこそが、天皇を中心とする朝貢体制である。それは東アジアにおける最も自然な国際体制ではないだろうか

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