書評トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読み解く トマ・ピケティさんの『21世紀の資本』を読んだ。 2014年に出版された本書は邦訳600ページに及ぶ大著だが、読み始めると意外と面白く、一気に読み通してしまった。ひとつひとつの概念を丁寧に説明して議論を組み立ててゆくので、何も知らない状態から読み始めても、すんなり読めるように工夫してある。良い本であ... 2023.11.04書評経済
書評斎藤幸平『人新世の「資本論」』を読み解く 斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読み解きます。 1 本書の主題は、気候変動への対策を議論することである。国連のSDGsによって示されたように、気候変動は人類社会にとって大きな問題になっている。その問題の大きさを読者に再認識させ、かつ、既存の対策の不十分さを示すことが、第1章から第3章までの内容... 2023.10.18書評世界政府政治経済
経済なぜアメリカは世界最強国なのか 人口減少 いま、日本では人口減少が起きている。中国や韓国でも高齢化、少子化によって人口が減少しつつあり、ヨーロッパも同様の状況である。 一方で、アメリカの人口は順調に増え続けている。アメリカでは出生率の高さに加えて、移民の流入によって人口が増加している。 そもそも、人間が生きるためには衣食住が必要で... 2023.04.04経済社会経済
経済経済成長とキリスト教 付加価値とは何であるか。 たとえば、一枚の布が、一人の労働者の一日分の仕事で生産されるとしよう。 もしも、同じ大きさの布が、一人の労働者の半日分の仕事で生産されるようになれば、生産性は二倍に増加したことになる。 ここで、その布が以前と同じ値段で売れれば、売り上げは二倍になる。 一方、供給が増加したこ... 2022.12.05経済宗教社会経済
経済円安と日本経済の停滞 記録的円安 現在、円安が進行中である。2022年4月28日には1ドル=130円台まで下落した。理由は日米の金利差だという。アメリカは景気が回復したため利上げを行ったが、日本は景気が低迷しているためマイナス金利のままである。ゆえに、ドルを銀行に預けると利息の分だけ額が増えるので、円を売ってドルを買う動... 2022.05.03経済社会経済
政治重農主義宣言 資本主義によって人類は豊かになっただろうか。全体としては豊かになったが、同時に貧富の格差は拡大し続け、気候変動という災厄をも生み出してしまった。ゆえに、資本主義は誤った思想であり、共産主義こそが正しい。このように主張する知識人と、それを支持する人々がいる。 彼らの間違いは、資本主義と共産主義という二... 2021.12.11政治思想経済
経済格差の拡大が経済を成長させる 保育という仕事は生産性を向上させることが難しい。機械化も効率化もできず、子どもの面倒は人間が見るしかない。そうした手間のかかる仕事を一部の人間に押し付け、残りの人々は生産性の高い仕事に従事する。 後者が生産性を向上させればGDPは増えるが、それが可能になるのは、生産性の低い仕事を他人に任せた結果であ... 2021.10.28経済経済
経済貨幣という病 GDPが社会の富を表現するという考えは、アダム・スミスにさかのぼる。彼は日用品の流通量がその社会の富を表すと考えた。ゆえに、商品の取引において用いられる貨幣の量を計ることで、その社会の富を算出できることになる。だが現代においては、日用品ではなく、貨幣そのものが富を表現すると考えられている。こうなった... 2021.10.17経済経済
経済ITの次に来る技術 アナログからアナログへ むかしの日本は技術大国として世界から尊敬されていたが、いまは見向きもされない、という話がある。電化製品や自動車など、ものづくりには秀でていたが、IT社会に対応できず、技術革新が生まれていない、と。いまは「テクノロジー=IT」と言ってもいい時代なので、ITの分野で活躍できないこ... 2021.10.08経済科学経済
アジア史タリバンと一帯一路 先日、タリバンがアフガニスタンの首都カブールを奪還し、新政府の樹立を宣言した。外国勢力によって支えられた政府は長続きせず、国内から現れた勢力が、最後には民衆の支持を獲得する。当然の成り行きである。 ここで、タリバンが中国政府と親密な関係を保っていることは重要である。アフガニスタン人は中国の一帯一路政... 2021.08.18アジア史中国政治経済