作戦計画試案

1

現代は戦国時代である。百を超える国々が乱立し、それぞれが独自に法を作り軍隊を保有している。この国々を律する法はなく、弱肉強食の世界である。これが戦国時代でなくて、何なのか。我々はこの世界に覇を唱える。天下は統一されるべきである。

中核となるのは、日本、中国、ロシアの三カ国である。これに、できるだけ多くの国を加え、東アジアに同盟を作る。同時にアラブ諸国の結束を促し、世界に三つの大きなブロックを作る(世界の分割参照)。


これは、地球大の包囲作戦である。我々と同盟国とで、北米とヨーロッパ半島を包囲する。そこで、南米諸国の動向が重要になる。南米大陸が参加するならば、包囲網はかなり狭められ、オーストラリアは孤立する。

また、ロシアの担当する包囲線はかなり広範囲にわたるが、これはメリットでもある。アメリカは世界でも有数の資源国であり、石油の供給量も多い。そのため、アメリカ一国でも長期戦に耐えることができるだろう。しかし、ヨーロッパの必要量をも同時に賄えるかどうかは、疑問である。

ヨーロッパのエネルギーは、ロシアの天然ガスに依存している。ロシアがそのパイプラインを閉じれば、ヨーロッパの経済は麻痺するだろう。これは一つの切り札になりうるが、逆に言えば、ロシアを崩されれば我々は負ける。ロシアの負担は非常に大きくなる。

包囲網のもう一つの正面はアラブ諸国である。この国々が当たらなければならないのは、イスラエルである。ここが正念場になるだろう。ムスリムは神は信じるが、人は信じない。ゆえに、我々が督戦に赴かなければならない。アラブ諸国をまとめ上げ、戦場に立たせるために、まず我々が、イスラエルの矢面に立たねばならない。つまり、自衛隊の正面はイスラエルになるだろう。

同時に日本国内では、最終局面に向けて核兵器の量産を急ぐ。アメリカよりも先に、我々が仕掛けねばならない。兵は拙速を尊ぶ。敵が判断しかねている間に、こちらは迅速に兵を進める。本格的な戦闘が始まる前に敵を制圧すること、それが上策である。

イスラエルはヨーロッパへの橋頭保である。イスラエルが陥落すれば、ヨーロッパの降伏は時間の問題である。戦闘を最小限にするために、イスラエルの速やかな攻略が求められる。ここで包囲網は最小となり、作戦の第一段階は終わる。そして、ここからが本番である。

2

我々はまず、アメリカに降伏を勧告する。彼らがそれを拒否したとき、作戦は第二段階に移る。


アメリカへの侵入経路は、東西南北の四つの可能性が考えられる。

まず、太平洋からの侵入。これは、太平洋を横断するだけでも時間がかかり、アメリカに時間的猶予を与えてしまう。

次に、北極海からの侵入。ロシア領から北極を越えて北米に侵攻する。これはおそらく、現時点では不可能だろう。温暖化が進み北極海の航行が容易になれば、可能性はあるかもしれない。

三つめは、南米からの侵入。この場合、陸伝いに侵攻することが可能である。おそらく、メキシコはアメリカ側につくだろう。メキシコとアメリカの国境線は長いので、その全体を防衛することは現実的ではない。しかし、パナマ地峡を防衛することは容易である。南米から北米に侵入する場合、必ずパナマを通ることになるが、ここを通る軍隊は爆撃機の格好の標的となるだろう。ゆえに、陸路からの侵入は難しい。

最後は、大西洋からの侵入。これは検討する価値がある。しかし、アメリカの海軍力の前では、迅速な侵攻は難しいだろう。


結論として、我々は、アメリカに降伏を勧告するまでに、核弾頭を搭載したICBMを数千基用意しておく。そして、彼らが降伏を拒否したときには、間髪を入れずにアメリカ全土を核の炎で焼き尽くす。これ以外に勝算はない。この仕事は日本にしかできないだろう。

また、注意すべきことがある。作戦が第二段階に移るまでは、決してアメリカ国民に危害を加えてはならない。彼らに戦争の口実を与えてはならない。むろん、戦場にアメリカ軍が現われた場合は別である。しかし、彼らが最後まで孤立を保とうとする可能性も、ないわけではない。我々を非難する口実を彼らに与えてはならない。

もしかするといまだに、GDPで勝てなければアメリカには勝てない、と思い込んでいる人がいるのかもしれない。しかし、北朝鮮のような小国でも、アメリカを脅かすことはできる。軍事力と経済力の均衡はすでに崩れている。経済力で数倍勝る相手を、軍事的に制圧することは不可能ではない。まして諸国間の連帯があれば、なおさらである。

覇権の交代に際しては、一つの劇の上演が求められる。それは実際的な必要からというよりも、人々の意識を変えるために必要とされる。

3

しかし、この作戦の前にグアムを取り戻せるという考えは、楽観的過ぎるかもしれない。我々は、この作戦と同時に、グアムの奪還を試みるべきだろう。

既に述べたように、グアムの守りは鉄壁である。しかし、弱点が一つある。それは、本国からの距離が遠いことである。アメリカの軍事拠点の中で、グアムは飛び地のようになっている。日本が友好国であるうちは、グアムの安全は保障されている。だが、それが覆った時には、グアムは敵地の中で孤立することになる。

もしも、日本と中国が協力するならば、沖縄の米軍は袋の鼠である。これは適切に対処すれば問題ない。問題は、グアムまでの距離をいかにして詰めるか、ということである。グアムから日本への攻撃を、効果的に阻止することができるだろうか。


基本的な戦略としては、グアムと外界との交流を遮断するべきである。本国からの補給を遮断し、外界との人的・物的な交流を阻止すると同時に、情報面でも完全にグアム基地を封鎖する必要がある。そうすることで、兵士たちを心理的に追い詰める。そのような、心理的・政治的な面からの戦いが主となるだろう。

政治的というのは、我々はグアムの包囲を行うと同時に、アメリカ国民に対して「あなた方の判断が、グアムの兵士たちを苦しめている」という情報を発信する。これは、欧州における心理的な不安と相まって、相当の効果を発揮するはずである。

欧州においては、ロシアの軍事力による圧力と、天然資源を利用した経済的な圧力が重要である。彼らがヨーロッパを引き付けている間に、我々はイスラエルを攻略する。つまり、陸上自衛隊はイスラエルを攻略し、海上自衛隊はグアムを攻略する、という二正面作戦である。自衛隊は世界で最も強い、と私は確信している。使い方によっては、米軍にも勝るだろう。

4

外交においては、相手と交渉しよう、と考えてはならない。相手がこちらに従わざるをえないような状況を、どのように作るか、ということを考えなければならない。

相手は我々との約束を守るだろう、と考えてはならない。彼らは必ず約束を破る。だから、約束を破ったならば相手に不利益があるような状況、あるいは、約束を守ることで、確実に利益があるような状況を作らねばならない。

軍事力による脅しも、たしかにそのための手段になりうる。しかし、それは逆の効果をもたらすこともある。総合的に判断しなければならない。軍事力を使うにしても、それが一見、我々の仕業ではないように見せかけねばならない。もちろん、すべての人間をだますことはできない。ただ最低限、我々がやったのではない、と言い張れるような状況を用意するべきである。

目的のためならどんな手段も許される、ということはない。我々が何をしようとも、それを許してくれる人間などいない。我々がしたことの報いは、いずれ我々自身が受けるだろう。我々は、そのことを喜びと思えるように行動しなければならない。

(作戦計画試案 終)

<参考>
世界の分割
世界最終戦争
グアムと沖縄
多民族国家
人口爆発と気候変動
地球温暖化と経済活動
日本の戦略

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