イエスと奇跡

1

イエスは死人を生き返らせたそうだが、そんなことは、インドでは日常茶飯事である。また、彼は神の子供だというが、神の親類縁者ならば、インドにはごまんといる。聖書に記されている奇跡は、マハーバーラタと比べると、あまりにも貧相である。インドに行けば、イエスはどこにでもいる仙人の一人に過ぎない。それなのに、どうして西洋人は、あそこまで聖書をもてはやすのだろうか。

公平な立場に立つならば、聖書の記述と同じように、マハーバーラタの記述も信用しなければならない。聖書に書いてあることだけが正しく、ほかの言い伝えは全て間違いだというのは、ただの偏見である。また、イエスの実在を立証する証拠がいくら見つかったところで、それは、彼が復活したことの証拠にはならない。しかし、もしもイエスが復活しなかったのだとしたら、彼に何の価値があるだろうか。

聖書とマハーバーラタがどちらも真実だとするならば、マハーバーラタの方が遥かに重要である。

2

イエスの言葉は、クリシュナの言葉よりも、本当に立派だっただろうか。

イエスの女々しさは、クリシュナの雄々しさにはかなわない。イエスの弟子たちの臆病さは、アルジュナの勇敢さにはかなわない。そんなことは子供でも知っているはずだ。

バラタの雄牛はもう絶滅してしまったのか。自分がいかさまに遭っていることに、まだ気付かないのか。

<思想論集 終>

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