相互確証破壊

 核兵器の相互確証破壊は、戦略として成り立っていない。そもそも、報復攻撃が抑止力になるという考えには何の根拠もない。もしも、死を恐れない敵がいたならば、相互確証破壊は無効である。だが、死を恐れるような軍隊は初めから敵ではない。
 ここで問題となるのは、次の二点である。まず、敵国の一般市民を標的とする攻撃を行うべきかどうかということ。次に、それを行いうるとして、彼らが死を恐れていない場合、やはり相互確証破壊は無効であるということ。

 第一の点に関して言えば、一般市民を標的とする攻撃は、原則として行うべきではない。それは卑怯であり、そのような作戦を実行する軍隊には、いかなる大義もありえない。
 しかし、もしも、敵がそのような戦争を望んでいる場合には、それは道義的に間違いだとは言えない。敵国の軍事組織が、自国の一般市民を攻撃するか、または攻撃する意図を有していることが明らかである場合には、敵国の一般市民を攻撃の対象とすることは、無条件に非難されるべきことではない。それは、戦争の泥沼化と長期化を招くため、軍事的には誤りであるが、必ずしも道義的な非難に値するわけではない。
 さて、第二の点に関して言えば、そのような国民は存在しうる。少なくとも、存在しないという保証はない。したがって、相互確証破壊は戦略として成り立っていない。

 もしも、防衛大学校の生徒がこのような戦略を提案したならば、彼は落第にされるべきである。こんな戦略を本気で信じているのは、よほどの馬鹿だけであろう。

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