新型ウイルスのワクチンについて

アメリカの製薬会社が、新型コロナウイルスのワクチン開発に成功したという。近いうちに認可を受けて、使用が開始されるらしい。これが問題解決の糸口になるだろうか。

このウイルスは世界中でパンデミックを引き起こしているので、これを終わらせるためには、世界中にワクチンを普及させる必要があると思う。先進国だけでワクチンを使い、発展途上国ではワクチンを使えない状態が続くならば、発展途上国で進化したウイルスが、先進国に舞い戻ってくる可能性もある。

たとえば、農薬で害虫を除去する場合、その農薬に耐性を持つ特定の害虫が大繁殖したりする。それと同じように、新型ウイルスの一部が進化して、ワクチンが効かないものが現れれば、それが一気に感染を拡大させるだろう。


ウイルスが自分の子孫を増やすためには、感染を拡大させることが最もよい。しかし、一度感染した人間には抗体ができ、免疫が強くなるので、再び感染することはできなくなる。つまりウイルスは、自分が生息する環境を一つずつ潰しながら、生息範囲を拡大させているのである。しかし、感染を拡大させて子孫を増やすメリットの方が大きいので、彼らは感染拡大という戦略を選択する。

一方で、その拡大の波に乗り遅れたグループも存在するはずである。先行するグループが感染者を増やすほど、遅れてきたグループにとっては、生息できる環境が少なくなる。そこで彼らがどのような戦略をとるかというと、自分の形を変えて、先行するグループが作った抗体が反応しないようにしてしまえばよい。つまり、人間の免疫系を出し抜くような進化を始めると考えられる。

新型コロナに再感染する人がいる、という話を聞いたときに、私が想像したのはこれである。ウイルスの方が進化して、抗体が効かなくなってしまったのではないか。そういうことがあるのだとすれば、いま作っているワクチンに対しても、やがて耐性を持つウイルスが現れるかもしれない。それを防ぐためには、全世界で一度にウイルスを抑え込むしかない。先進国だけでワクチンを使っても、長期的に見れば効果は薄いだろう。


また、常々不思議に思っていることだが、季節性のインフルエンザは、毎年新しいものが流行するらしい。それらのウイルスはどこから出てきて、どうやって進化しているのか。

ひょっとすると、人間が作ったワクチンのせいで、ウイルスの進化が早まっているのではないだろうか。ワクチンに対抗できるように、毎年ウイルスが進化して、新しいインフルエンザが流行るのかもしれない。そうすると、今回の新型コロナに対するワクチンにも、同じ作用があると考えられる。いずれにせよ、局地的なワクチンの投与で問題が解決するとは思えない。


少し不謹慎かもしれないが、私は、今回の新型ウイルスの流行を興味深く眺めている。これによって、ウイルスとは何か、という問題を考える手掛かりが得られるからである。ウイルスは今まで謎の多い存在だったが、このパンデミックによって、様々な性質が明らかになった。我々のウイルスに対する理解が進むきっかけになればよいと思う。

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