プロパガンダ

 福島産の作物に対する風評被害は、いまも続いている。科学的な調査によって安全性は保障されているにもかかわらず、それはなかなか認知されない。そこで調査の結果をどれだけ丁寧に説明しても、大した効果はない。
 私は、次のような方法が有効ではないかと考える。たとえば、映画を作る。テーマは何でもよく、ヒーローアクションでも、サスペンスドラマでもよい。そういう娯楽大作を作って、その中の本筋とは全く関係ないところに、さりげなく、福島産の野菜は安全だ、という情報を、その根拠と共に入れておくのである。話の筋を追うことに夢中になっている観客は、その情報を意識しないが、記憶の中には残っている。そういう具合に、情報を紛れ込ませる技術が必要である。

 それはプロパガンダではないか、と言う人がいるかもしれない。そのとおりである。しかし、本当のことを言っているのだから問題はない。プロパガンダによって嘘の情報を広めることは問題だが、本当の情報を広めることには何の問題もない。だから、嘘をつかないようにする、ということも重要である。
 仏教ではこれを方便と言う。お寺では現世利益ということを盛んに言って、お守りを売ったり祈祷をあげたりしているが、あれは人を釣るための手段である。甘い言葉で人を引き寄せておいて、その中にさりげなく、仏の教えを紛れ込ませておくのである。そうすると、人の心の中にそれが自然と染み込んでゆくようになる。これが方便である。
 それも、現世利益が嘘であれば問題である。しかし仏の教えを信じることは、確実に現世利益をもたらすのだから、問題はない。つまり、方便は真実でなければならない。嘘は方便ではない。仏の教えは全て方便である。

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