満洲事変について

中国人が満洲事変に驚いたのは、まさかそんなことができるとは思っていなかったからである。

当時の関東軍の兵力は一万足らずで、装備は旧式だった。対する張学良の軍勢は十数万と言われ、装備の面でも優れていた。このような状況で、日本側が事を起こすとは誰も思わなかったし、ましてそれが成功するとは考えられなかっただろう。

それが可能になったのは、一つには、満洲という地域が近代化されていたからであり、二つには、現地の日本人の全面的な協力のおかげである。一般の日本人の協力のもと、関東軍は満洲一帯の通信と交通のシステムを一気に押さえ、敵側の連絡手段を奪った。それによって、あっけなく勝負が決まったのである。なまじ鉄道や電信技術が整備されていただけに、そこを押さえられると手も足も出なくなってしまう。まさに近代的な戦争であった。

もう一つの重要な要因は中国側の慢心であって、これ以降、日本軍は容易に中国人に勝てなくなる。兵力に差があっても油断してはならない、という教訓を中国人に与えたのである。

また、おそらく毛沢東の戦略は、この経験から学んだものであろう。土地の住民を味方につけてゲリラ戦を行う、という発想は、満洲事変の発想に近い。寡兵をもって大軍を倒す方法を、彼は日本人から学んだのだろう。戦場では、敵が最良の教師となるわけである。

タイトルとURLをコピーしました