地球温暖化について

1 はじめに

昨今の日本では、異常気象が続いています。毎年のように水害が起き、夏の暑さは年々過酷さを増しています。

原因は地球温暖化です。温暖化対策が人類にとっての課題であることは、誰の目にも明らかなはずです。

にもかかわらず、温暖化の原因はまだ分かっていない、と主張する人々がいます。甚だしきに至っては、地球は温暖化していない、という声さえ聞こえてきます。彼らの言葉に耳を傾ける必要はあるのでしょうか。

2 本当に温暖化は起きているのか

はじめに、温暖化そのものの真偽について考えてみましょう。

そもそも、地球の気温が上昇していないとすれば、北極の氷はどうして溶けているのでしょうか。さらに、世界各地で氷河が溶けていることが確認されています。一体どんな理由で、氷が溶けているのでしょうか。

氷が溶ける場合、原因はいくつか考えられます。

 一つ目は、温度の上昇です。
 二つ目は、圧力の上昇です。
 三つ目は、化学的な変化です。

以上の三つの可能性があります。

このうち三つ目の場合には、水が化学的に分解されていることになります。しかしそのためには、特殊な化学薬品が必要です。世界中の氷が溶けているのだとすると、誰が氷に薬品を掛けてまわっているのでしょうか。

また、地球表面の大気圧が上昇しているという証拠はありません。したがって、氷が溶ける理由は、温度の上昇しか考えられません。実際、平均気温の上昇を示すデータは多数あります。

2.1 補足:降雪量と氷河

あるいは、氷河の消滅については、次のような説明もありうるでしょう。

氷河が一定の大きさを保つことができるのは、毎年、氷が溶け出すのと同じ分量の、雪が降っているからです。溶けた分と増えた分の差し引きがゼロになるので、氷河は一定の大きさを保ちます。したがって、氷河が小さくなっているのは、雪の量が減っているからだ、と考えられます。では、どうして雪の量が減ったのでしょうか。

たとえば、地球全体の降水量が減っているとしてみましょう。つまり、雨の量も雪の量も共に減っている、と考えてみましょう。そうすると、地球全体で海水の蒸発量が減っている、ということになります。なぜならば、地球上で降る雨と雪の全量は、海水の蒸発量と等しくなければならないからです。そうでなければ、宇宙から水が降っている、ということになるでしょう。地球上に存在する水の量が変わらないならば、降水量と蒸発量は一致するはずです。

しかし、海水の蒸発量が減っているということは、地球が寒冷化していることを意味しています。なぜならば、水温が下がるほど、水の蒸発量は減るからです。しかしながら、本当に寒冷化が起きているのだとすると、雨の量と雪の量の比率も変わるはずです。つまり、雨の量が減り、雪の量が増えるはずです。したがって、氷河は成長することになるでしょう。これでは全く説明になりません。

また、たとえば、雨の量が増え、雪の量が減ったために、氷河が減少しているとしてみましょう。しかし、それはやはり温暖化を意味しています。結局、氷河の融解に関して、地球温暖化以外に満足のゆく説明はありません。

3 温暖化に原因はあるのか

さて、次の問題は温暖化の原因です。

ここで、原因を探求する前に、次のような疑問について考えてみましょう。そもそも、温暖化に原因があるというのは本当だろうか。温暖化は自然に起きているもので、原因はないのではないか。

しかし、もしも温暖化が、原因もなく、自然に起きているのならば、いまごろ地球の気温は4600万度になっているはずです。なぜならば、地球が誕生してから現在まで、46億年が経っています。もしも、100年間に1度気温が上昇する、ということが自然に起きるのだとしたら、46億割る100で、現在までに4600万度の気温の上昇があったはずです。

しかし、これは事実と異なります。よって、地球の温暖化には何らかの原因がなければなりません。では、一体何が原因なのでしょうか。

3.1 原因の候補1:地球の軌道と太陽活動

まず考えなければならないのは、地球外の要素です。

一つには、軌道の作用があります。太陽の周りをまわる地球の軌道は、わずかずつですが、毎年ずれてゆきます。地球の軌道が太陽から遠ざかるほど、太陽から届く光の量が減るので、寒冷化が進みます。逆に、地球が太陽に近づくほど、日射量が増え、温暖化が進みます。

また、このずれには周期がある、ということも分かっています。そのため、地球は定期的に温暖化と寒冷化を繰り返している、ということが明らかにされています。

もう一つの要素として、太陽活動の変化があげられます。太陽の活動が活発になると、太陽から放出される光の量が増え、結果として地球の温暖化が進みます。逆に、太陽の活動が低下すると、地球の寒冷化が進みます。

以上のような、いわば地球外の要素によって、地球の気候が変化することが明らかにされています。しかし、詳しい説明は省きますが、これらの要素を考えあわせても、ここ一、二百年の気温の変化は説明できないのです。

地球外の要素だけでは、温暖化を説明するのに十分ではありません。したがって、温暖化の原因は地球の内側にある、ということになります。

3.2 原因の候補2:温室効果

では、最近の二百年間において、地球の表面、あるいは内部において、何か大規模な活動が起きていたでしょうか。

たしかに、活発な現象があったと言えます。それは人類の活動です。産業革命以来、人類が排出し続けてきた二酸化炭素の量は、地球大気の全体量と比べても、無視できる大きさではありませんでした。人類は、石油や石炭などの化石燃料を燃やすことで電気を作り、機械を動かしてきました。そして同時に、化石燃料の燃焼によって、大量の二酸化炭素を大気中に排出してきました。

二酸化炭素には温室効果があります。そのため、二酸化炭素が増えることによって、地球表面の温度が下がりにくくなります。

そもそも、地球は常に太陽の光にさらされ、温められています。しかし、太陽の熱を吸収するばかりでは、地球の温度はどこまでも上昇してしまうでしょう。そうなっていないのは、熱を吸収するのと同時に、放出してもいるからです。

熱輻射、という形で、地球は宇宙空間に向けて熱を放出し続けています。輻射とは電磁波の放射であり、地表から放出された電磁波のエネルギーの分だけ、地球は冷やされます。つまり、太陽によって温められる一方で、宇宙空間に向けて熱を放射しているので、地球の気温はほぼ一定に保たれているのです。

しかし二酸化炭素には、熱輻射の効率を悪くする性質があります。したがって、二酸化炭素が増えた分だけ、地球の冷却は遅くなります。ところが、太陽から与えられる熱量は変わらないので、結果として、地球の温度は上昇を始めます。これが、温室効果によって温暖化が起きている、ということです。

この説明によって、ほとんどすべての現象が理解できます。事実上、これが唯一の答えと言っていいでしょう。

3.3 本当に二酸化炭素が原因なのか

しかし、だからといって、二酸化炭素が温暖化の原因である、ということが、百パーセント正しいと言えるわけではありません。本当の原因が他にあるということを、否定することはできないのです。

ここで仮に、その説明が正しいとしてみましょう。つまり、二酸化炭素以外に原因があるとしてみましょう。その場合、我々が二酸化炭素を排出し始めるのと同時に、何らかのメカニズムが地球内部で働きだし、その結果、あたかも二酸化炭素が原因であるかのように見えている、という説明をすることになります。これは、私にはこじつけにしか思えません。

それに、そもそもどうして、二酸化炭素が原因ではない、と断言することができるのでしょうか。二酸化炭素以外にも原因がある、という主張は、二酸化炭素が原因である、という主張と矛盾しません。原因は複数あってもよいのです。

しかし実のところ、二酸化炭素が原因ではない、という可能性もないとは言えません。その場合、温暖化対策のために二酸化炭素を減らす必要はない、ということになるのでしょうか。

さて、ここに問題があります。

二酸化炭素は温暖化の原因ではない、ということを証明することは可能でしょうか。そもそも、ある二つの事象の間に因果関係があるかないか、ということを、どのようにして判断すればよいのでしょうか。

3.4 因果関係を明らかにする方法

そのような方法が一つだけあります。それは対照実験と呼ばれるものです。

たとえば、ある医者が、新しい薬を開発したとしましょう。その薬を売り出す前に、薬の効果を確かめてみなければなりません。そのときに行われるのが対照実験です。

まず、その医者は、薬が効きそうな病気を持った人たちを集めます。そして、その人たちに薬を飲ませてみます。もしも、薬を飲んだ後で病気が治ったならば、その薬には治療効果がある、ということが証明されるように思えます。

しかし実際には、それだけでは不十分です。もちろん、その実験も行う必要があります。薬を飲むと病気が治る、ということを確認することは必要です。ただ、その薬に治療効果がある、ということを証明するためには、もう一つの実験を行わなければなりません。

それは次のような実験です。まず、先ほどと同じように、病気を持った人たちを集めてきます。そして、その人たちに、薬を飲ませないでおきます。その後、病気が治るかどうかを見てみます。

もしも、薬を飲まない人たちの病気が治ったならば、その薬には治療効果はない、ということになります。というのも、薬を飲んでも飲まなくても病気が治るのですから、薬を飲む必要はありません。

一方で、もしも、薬を飲まない人たちの病気が治らなかったならば、その薬には治療効果がある、ということが立証されます。

つまり、ある薬と病気の治癒との間に因果関係を認めるためには、次の二つの事実を確認する必要があります。

 薬を飲むと、病気は治る。

 薬を飲まないと、病気は治らない。

この二つの事実が確認されて初めて、因果関係を証明することができます。どちらか片方だけでは十分ではありません。これが、因果関係を証明するための、最も一般的な方法です。この条件を公式化すれば、次のようになるでしょう。

 Aがあるならば、Bはある。

 Aがないならば、Bはない。

これら二つの条件が満たされたとき、AとBの間には因果関係があると言えます。

3.5 減らせば分かる

さて、我々の問題に戻りましょう。

現在のところ、我々が知っている事実は、「大気中の二酸化炭素が増加しているとき、温暖化が進んでいる」ということです。

しかし、これだけでは、二酸化炭素と温暖化の因果関係を証明することはできません。それを証明するためには、もう一つの実験を行う必要があります。それは、二酸化炭素が減少するとき、何が起きるのか、という実験です。

もしも、二酸化炭素が減少するときに、温暖化が止まるならば、二酸化炭素は温暖化の原因である、ということが証明されます。

もしも、二酸化炭素が減少するときに、温暖化が止まらないならば、二酸化炭素は温暖化の原因ではない、ということが証明されます。

したがって、二酸化炭素が温暖化の原因であるかどうか、ということを確かめるためには、いちど二酸化炭素を減らしてみる必要があります。つまり、実際に二酸化炭素を減らしてみれば、二酸化炭素が地球温暖化の原因であるかどうかは、疑いの余地なく明らかになる、ということです。

ゆえに、二酸化炭素は温暖化の原因ではない、と主張する人には、自分の主張を証明するために、二酸化炭素を削減する義務があると言えるでしょう。

結局、我々には選択肢は一つしかありません。世界中の人々と協力して、二酸化炭素の削減に向けて努力してゆかねばなりません。

4 温暖化の影響

4.1 気候変動

最後に、地球温暖化の影響について考えてみましょう。

まず、地球全体が温暖化することによって、海洋の表面温度が上昇します。海洋の表面温度が一度上がるだけで、海水の蒸発量は大きく変わるはずです。そして、大気中の水蒸気量が変われば、それは当然、海洋上の天気に影響を与えます。そして、海洋上の天気が変化することで、日本上空の天気も変化するでしょう。

というのは、日本上空の大気だけが、地球上の他の地域の大気から切り離されているわけではないからです。日本の大気は、世界中の大気とつながっています。よって、海洋上の大気の状態が変化すれば、それは必ず、日本の大気の状態に影響を与えます。

さらに、地球温暖化の影響は、一過性のものではなく、持続するはずです。したがって、地球温暖化は日本の気候に影響を与える、と結論することができます。

4.2 明日は我が身

日本の異常気象の原因は、地球温暖化です。地球温暖化の原因は、二酸化炭素の増加です。二酸化炭素増加の原因は、我々の経済活動です。つまり、我々の経済活動が、我々自身を苦しめている、ということになります。これを自業自得と言います。

自分の行動が原因となって、自分自身を苦しめているのですから、自分の行動を変えることで、問題を解決することができます。このような自覚を、一人ひとりの人間が持たねばなりません。洪水で流されてから後悔しても遅いのです。

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