イヨマンテ

先日、『ゴールデンカムイ』という漫画を読んだ。その中に、イヨマンテの話が出てきた。イヨマンテは、アイヌの風習である。簡単に言えば、母親を殺された子熊を村で育て、成長してから殺す、というものである。この風習にどういう意味があるのか、少し気になり、考えてみた。

まず、子熊の親を殺したのは、アイヌ自身である。大人の熊を狩ったところ、その熊には子供がいた。目の前で親を殺された子供までをも殺すというのは忍びないし、親がいなくなった子熊は、放っておけば餓死するだろう。そうすると、当面の間は面倒を見ようということになる。それで、村で子熊を育てることになる。

しかし、大きくなった熊が、人間と一緒に暮らすことはできない。かといって、山に返すこともできない。というのは、人間に育てられた熊には、山で暮らす方法が分からないからである。それに、山に捨ててこようとしても、人間の後をつけて、村に戻ってきてしまうかもしれない。そうなったら、どんな間違いが起きるか分からない。

だから、殺すしかないのである。それは一種の妥協であり、折衷案である。それにはやはり罪悪感が伴うので、祭りということにして紛らわす。しかし、その祭りが何のためのものなのか、みんな分かっていたはずである。

祭りや儀礼というのは、自然な感情の発露である。押さえきれない感情が、形となって現れたものである。葬式というのもこれと同じで、親族を失った情が自然に現れたものである。儀礼を軽んじることは、人間性の喪失につながるだろう。

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