自民党の問題点
先日の衆院選では、自民党が過半数の議席を獲得し、立憲民主党は議席を減らした。選挙前から自民が勝つだろうとは思っていたが、ここまで大勝するとは思っていなかった。
国民が自民党を選ぶ理由は、民主党に対する拒否反応が大きいのだろう。安倍元首相が「悪夢の民主党政権」と繰り返したことで、民主党に対する負のイメージは強固なものとなっている。
とくにネット上では民主党の外交政策を非難する声が多いが、あの政権はむしろ、日本が置かれている困難な状況を浮き彫りにしたという点で、一定の評価を受けるべきであろう。
安倍晋三は、アメリカのトランプ大統領と親密な関係を作り、ロシアのプーチン大統領と何度も首脳会談を行うなど、外交が上手かったと評されている。その反面、アメリカからはF35を大量に購入させられ、ロシアとの領土問題も一向に進展しなかった。
領土問題に関して言うと、日本は明らかに足元を見られている。そもそも千島列島は、樺太・千島交換条約において、ロシア政府が日本の領土であることを認めた土地である。にもかかわらず、ロシアは太平洋戦争末期に武力によってこれを占領し、いまだに不法占拠を続けている。ロシアが一方的に条約を無視して領土を侵犯したのだから、日本政府はこれに対して強く抗議しなければならない。なぜ、それができないのか。
理由はサンフランシスコ講和条約である。この条約の中に、日本は千島列島の主権を放棄する、という文言が含まれている。これがある限り、日本は千島の主権を主張できないのである。それが分かっているから、ロシアは強気になる。
日本はどうせサンフランシスコを否定できない。それならば、千島はロシアのものだ、と。完全になめられている。そもそも日本政府が主張する、北方四島は千島列島に含まれない、という主張には法的な根拠が存在せず、屁理屈にすぎない。これをロシアがまじめに受け取る必要はないのである。
したがって、ロシアとの領土問題を解決するためには、まずサンフランシスコ体制を見直さなければならない。日本は国連に対してサンフランシスコ条約の改定を迫り、それが受け入れられなければ条約を破棄する、というくらいの強い意思表示が必要である。
だがそれは、自民党には逆立ちしてもできない芸当なのである。自民党を生み出した55年体制は、サンフランシスコ条約と日米安保の上に成り立つものであり、自民党自体が両条約を肯定するために作られたと言える。したがって、自民党が与党であり続ける限り、日本はいまの国際環境を変えることができないし、領土問題を解決することもできない。
また、サンフランシスコ体制の見直しは、とうぜん日米安保の解消を視野に入れたものになるが、それができなければ、沖縄の基地問題を解決することもできないのである。
民主党が示したもの
民主党政権で首相を務めた鳩山由紀夫は、沖縄の米軍基地は最低でも県外に移転させる、と発言して物議をかもした。けっきょく彼はその主張を取り下げたが、一連の騒動は日本が置かれた状況を端的に示すものであった。日本は自国の領土を外国に占領されていながら、その状況に異を唱えることができない。
日本の領土である沖縄県は、いまだアメリカ軍に占領された状態にある。日本人は、それに対して不満を言うことができない。この状況を見た韓国や中国は、明らかに日本を見下しはじめた。日本の領土をどれだけ切り取っても、彼らは文句を言うことができない。日本は無力だ、と。
その無力の根底にあるものがサンフランシスコ体制である。これを否定しなければ、日本の外交上の立場が向上することはありえない。自民党はその現実を無視し、あくまでも党是にこだわり続け、アメリカとの表面的な友好関係を演出して、国民の目をごまかそうとしている。
これに比べれば、民主党政権のほうがまだましだった。鳩山には根性がなく、途中で主張を取り下げてしまったが、あの要求を続けていれば、日本が抱える本当の問題について、国民の理解も深まったかもしれない。少なくとも、自民党よりは希望があったと言える。
民主党政権については、その経済政策にも非難の声が上がっていたが、日本経済の失われた30年はそれ以前から続いていたのであり、彼らがとくに悪かったわけではない。べつだん良かったわけでもないが、55年体制からの脱却という意味では、必要な一歩だったと思う。
しかしあれ以降、日本人は先祖返りしてしまったようで、日米安保に支えられた豊かな日本、という過去の幻影にとらわれている。この国はおそろしいほど何も変わっていない。
真の保守
この点に関しては、左翼も十分な答えを提示できていない。彼らは、大東亜戦争は誤りだった、という前提から出発するので、どうしてもサンフランシスコ条約を否定できない。唯一日本共産党はサンフランシスコも日米安保も否定する構えだが、彼らの理想論についてゆける人は限られている。
自民党も同様に、戦後の冷戦構造を肯定するために、そして現在はアメリカ一極構造に迎合するために、大東亜戦争を矮小化することに努めている。いわゆる右翼の語るところによれば、あの戦争は自衛のための戦争であり、主権国家として当然の権利を行使しただけという。
これはサンフランシスコ体制の枠内で、つまりアメリカ政府や国連の意思に反しない範囲で、最大限可能な自己正当化である。じつに情けない。そうまでして自分を正当化したいのだろうか。あの戦争の大義を否定してまで、自分たちの立場を守りたいのか。日本が何のために戦ったのか、そしてどれだけ大きな成果を獲得したのか、それを声高に主張する勇気はないのだろうか。
日本は欧米による植民地支配を打倒するために戦争を始め、実際にその目的を達成した。それまでアジア人に塗炭の苦しみをなめさせてきた悪人どもを追い払い、アジアに自由を与えた。我々は歴史を作ったのである。なぜそれを誇りに思わないのだろうか。なぜ自民党は日本人の誇りを踏みにじるのか。
我々に必要なものは正義であり、あの戦争における日本の正しさを主張し続けることである。真に植民地政治を克服できたのは日本だけであり、いまの世界があるのも大東亜戦争のおかげである。日本人に必要なことは自信を取り戻すことであり、それは自民党政権下では決して期待できないことである。