存立危機事態

先日の国会で、高市早苗首相が「台湾有事は存立危機事態である」と発言したことが、中国政府を刺激している。ここでいう存立危機事態とは、集団的自衛権の発動要件に該当する。北京政府が台湾を攻撃すれば、日本の存立が危うくなるので、その場合、日本は集団的自衛権を行使して戦争に参加すべきだ、という趣旨である。

こうした発言にはふたつの意味があって、ひとつには、実際に武力行使を行うべきだという意思表示であり、ふたつには、その意思表示によって相手側を牽制しようとするものである。北京政府が台湾を攻撃すれば、同時に日本とも戦争になるのだとすれば、うかつに軍事行動に踏み切れない。実際に参戦すべきかということと、参戦するぞというマイク・パフォーマンスを区別して考える必要がある。

ただ、ほんとうに中国と戦争をするのであれば、台湾有事に参加する形はよくない。その場合、日本が後手に回ることになるからだ。人民軍が海峡を越えて台湾に攻め込んだ後で、自衛隊が行動を始めるのでは遅すぎる。かりに中国側がそれを見越していた場合、先手を打って自衛隊の封じ込めを行うはずだからである。戦争は先手必勝なので、敵よりも早く動かなければならない。

我々が考えるべきは、中国大陸への先制攻撃と、自衛隊の上陸である。というのも、かりに海上自衛隊が中国海軍との戦いに負けて封殺されてしまったならば、戦争はそこで終わりだからである。日本は島国なので、補給は海外から行うしかない。食料自給率を上げることはできるが、鉄や鉛を原料とする弾薬を自給することはできない。ゆえに、制海権を奪われ、補給線を遮断された時点で日本の負けとなる。したがって、日本が中国と戦うためには、先に制海権を奪う必要がある。すなわち、自衛隊が中国沿岸部を制圧し、中国海軍の基地を占領すればいいのである。そうすれば敵海軍は無力化され、日本は中国と互角に戦うことができる。

我々は、この不平等に注意しなければならない。中国軍が日本の国土に上陸すれば、その時点で日本の負けである。一方で、自衛隊が中国大陸に上陸すれば、戦いは五分五分になる。ゆえに、我々は攻めなければならない。専守防衛は絶対に負ける。

中国と戦う場合、第一目標は北京である。自衛隊を渤海湾に上陸させ、北京を占領することが最初の目標となる。そのためにまず、旅順と青島を押さえる必要がある。三度目の旅順攻略戦である。日本は日清・日露の両戦役において旅順を攻略しているが、今回が前二回と異なるのは、旅順のすぐそばに北朝鮮という敵性国家が存在することである。したがって、自衛隊はまず仁川港に上陸したのち、韓国軍と合流して北上し、北朝鮮・平壌を攻略する必要がある。そののち、鴨緑江を渡って中国領内に進攻し、旅順の攻略に取り掛かる。これはできるだけ速やかに行わなければならない。中国海軍の無力化が遅れると、日本が死んでしまうからである。

これはかなり骨の折れる仕事になるはずだ。ひとつには、北朝鮮軍は強い。国民生活を犠牲にしてまで軍事力の強化にいそしんでいるのだから、容易には落ちないだろう。ふたつには、核兵器がある。これをどうクリアするかが難しい。

核兵器の特徴として、使いづらい兵器だ、ということがいえる。そもそもこれは、軍隊を対象とした兵器ではなく、民間人を対象とした兵器なので、厳密にいえばテロリズムの道具である。ゆえに、核兵器を使うこと自体が卑怯なこととみなされ、確実に全人類の非難の的になるだろう。こうなると、なかなか使えない。ふつう人は、なにか悪いことをするときには、仕方なかったのだ、という言い訳をする。こうするしかなかったのだから、私に責任はない、といって、自分を正当化しようとするのである。しかし、核兵器に関しては、核兵器以外の手段が常に存在するので、それを正当化することは非常に難しい。

したがって、実際に核兵器が使用されるのは、その国の指導部が死の瀬戸際まで追いつめられたとき以外にありえない。どうせ死ぬならと、やぶれかぶれで使用することが現実に考えうる状況である。ゆえに核兵器への対策としては、命まで取らない、ということがありうる。戦争に負けても、指導部の生命の安全は保障するということにすれば、核の危険を減らすことができる。具体的には、金一族には北朝鮮の霊を祀る神社の神主になってもらって、社稷を安んじる任務を与えればよい。むろん、具体的な例をもって、こちらの意図を明らかにしなければ、彼らは我々を信じようとはしないはずだ。そこをどう伝えるかは、よく考える必要がある。

さて、首尾よく北朝鮮を攻略できれば、旅順へ進撃してこれを攻略すればよい。その後、山東半島の青島に中国海軍の根拠地があるので、これも攻略しなければならない。この間、中国中部・南部の海軍が自由になってしまうが、これはアメリカ軍と台湾軍に封じ込めてもらえばよい。自衛隊の戦力でどこまで中国海軍に対抗できるかはわからないが、米軍など同盟軍の協力があれば、いい勝負になるのではないか。

最後に考えるべき問題として、大義を用意しなければならない。中国共産党には、台湾はもともと中国の一部だ、という理屈があり、これにより台湾進攻を正当化している。国共内戦のけじめをつけるという意味でも、共産党が台湾にこだわるのは理由があるといえる。

これに対して、我々はどのような大義を用意すべきか。私が考えているのは、天下統一である。中国と北朝鮮を傘下に収め、暫定世界政府を発足する。世界を統一し、世界平和を実現するというのが、我々の掲げる大義である。アメリカや韓国は納得しないかもしれないが、こういうのは言ったもん勝ちである。

小難しい話をすれば、戦争の目的は平和である。戦争が終わるということは、平和になるということであるから、戦争の終着点は平和以外にありえない。ゆえに、どうやって平和を実現するか、ということを考えながら戦争をしなければならない。歴史を見ればわかるように、戦争が上手い人は平和を作るのが上手い。秀吉も家康も平和の天才である。戦争の才は平和の才である。だから、我々も平和な世界を目標として戦争をしなければならない。戦争を平和の手段として位置づけることが我々の大義である。

そのためには、あらかじめ世界政府の大綱を示しておかなければならない。この戦争によって本当に平和が実現するのだということを、具体的に提示する必要がある。もしもそれに賛同する人が現れれば、戦争をしなくてもすむかもしれない。平和裏に世界政府を実現することは常に可能である。

いまは戦国時代なので、戦争は起きて当たり前である。なぜ戦争が起きるかといえば、どんな些細な理由でも戦争は起きうるのであり、原因を考えることに意味はない。そうではなく、我々は平和の原因を問わなければならない。

どうして平和が起きるのか、という問いには答えがある。その答えの一つが天下統一である。戦争は二つの国があるから起きるわけで、世界を一つの国にしてしまえば、戦争はなくなる。これが平和の条件である。もちろんこれだけに限らないが、こうした平和の条件が欠けることが、戦争の原因となるのである。

恒久的な秩序、恒久的な平和を実現するためには、世界政府の存在が不可欠である。

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