私は人間社会には疎いが、自然の移り変わりには割と敏感である。そういう人間にとって、年々日本から四季が失われてゆくことは、身を切られるように痛ましいことなのだが、日本人の誰一人これを気にしていないように見えるのは、非常に不思議なことである。
最近、私の住んでいる町では、暴風によって倒される恐れがあるということで、杉の木が次々に伐り倒されている。私はよく散歩をするので、日差しを遮ってくれる樹木の存在はありがたい。これを切ってしまうと、町はますます熱くなるだろう。
樹木は光合成により、日光のエネルギーを化学エネルギーに変換する。太陽光がアスファルトに当たれば、そのエネルギーは全て熱に変わるが、葉っぱに当たれば、光合成の分だけエネルギーは減るので、温度の上昇は抑えられるはずである。また、樹木は地下から水を吸い上げ、葉っぱから蒸発させるので、周囲の温度を下げることができる。
大きな樹を伐り、アスファルトを敷き詰めることで、我々の町はどんどん熱くなっている。そのため住民は建物に閉じこもり、エアコンをつける。そのエアコンを動かすために石油が燃やされ、その分だけ温暖化が進む。いったい我々は何をしているのか。