戦わない勇気

クルクシェートラの大戦争の折、自軍の劣勢を悟ったアシュヴァッターマンはブラフマ・アストラ<神々の武器>を取り出した。それはすべての敵を滅ぼし、辺り一帯を7年間草木の生えない焦土と化してしまう恐ろしい武器だった。 パーンダヴァ軍はそれを見て恐れおののいた。

混乱する兵たちに、クリシュナは武器を捨てよと言った。ブラフマ・アストラは敵意を持つ者だけを攻撃する。ゆえに、こちらに敵意がないことを示せば、武器は発動しないはずだと。彼の言うとおりに全ての兵隊が武器を捨て、神に祈った。すると、アシュヴァッターマンの取り出した武器は消えてしまった。

恐ろしい敵の出現に対して、身構えてしまうのは人間の本能である。しかし、その恐れが事態を悪化させる可能性もある。敵に武器を向けるのではなく、あえて武器を捨てることで活路を開く。それがクリシュナの答えだった。

戦うだけが戦略ではない。矛を収めることも立派な戦略である。

我々はウイルスと戦うべきではない。我々がもがけばもがくほど、彼らの力は強まる。

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