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地球温暖化は人類共通の課題である。
では、温暖化を食い止めるために、我々は何をすればよいか。二酸化炭素を排出しない技術として、たとえば、クリーンエネルギーや電気自動車など、様々な製品が実用化されている。これらの新技術によって、温暖化を止めることはできるのだろうか。
おそらく不十分である。いくら新技術を開発しても、温暖化を止めることはできない。なぜならば、温暖化の第一の原因は、人間の増殖だからである。
たとえば、人間一人当たりのエネルギー消費量が現在と同じ水準で、人口が現在の半分に減ったならば、二酸化炭素の排出量は半分に減るだろう。つまり、人間が増えれば増えるだけ、二酸化炭素の排出量も増える。
人間は呼吸をするので、人間が増えた分だけ二酸化炭素は増える。また、人間を養うために家畜が必要となり、家畜が排出する分だけ二酸化炭素は増える。さらに、人間が住む家を作るために森林が伐採され、その分だけ二酸化炭素が増える。結局、人間の数を減らさなければ、温暖化を止めることはできない。人口のコントロールが、人間社会の喫緊の課題となっている。
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しかし、この問題は今に始まったことではない。
たとえば、明代以前の中国において、人口が最も多かった時期は、前漢王朝の末期である。そのころ、つまり紀元前一世紀ごろには、中国の人口は六千万を数えた。だが、その後の戦乱によって人口は減少し、再び前漢時代の人口に届くのは、ようやく明朝も末のことである。その後、清代を通して人口は増加を続け、清朝末期には四億人を数えることになる。また、同じ時期のヨーロッパでも、産業革命によって人口の爆発が起きていた。
では、日本はどうであったか。中国の清代は、日本では江戸時代に当たる。日本の人口は、江戸初期には著しく増加したものの、江戸中期以降は、ほぼ三千万で横ばい状態になった。
日本における人口の増加は、室町時代末期に始まったと思われる。まず、農業技術の進歩が扶養人口を増加させた。次に、人口の急激な増加によって、既存の社会システムが上手く機能しなくなった。それによって社会が流動化し、戦乱が頻発するようになった。つまり、人口の増加が社会を破壊し、戦国時代を招いたと考えられるのである。戦国時代は戦争が多く、死者も多かったが、それ以上に人口の増加が激しかった。それは江戸時代初期まで続いたが、あるときに頭打ちになった。
いったい何が起きたのだろうか。同時期の中国では、人口は右肩上がりに増加していた。一方、日本では、人口はほぼ横ばいだった。この違いはどこから来たのか。
3
人口爆発の問題は、現在でも続いている。
難民の問題は、戦争が原因ではない。その本質は人口の爆発である。いま、シリアの戦争で生じた難民が、世界各地に押し寄せている。難民とはムスリムである。そして、イスラム圏では人口の爆発が起きている。
難民とは、ある土地に住めなくなった人間が、他の土地に移動しようとすることである。なぜ人間が溢れるのかといえば、増えすぎたせいである。増えすぎたムスリムの人口を、中東という土地が収容できなくなり、世界各地に溢れ始めている。それが難民問題の本質である。
なぜ人口は増えるのか。どうすれば人口をコントロールできるのか。
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江戸時代の日本は、この問題に一つの回答を与えてくれる。それは封建制である。封建制においては、移動の自由は厳しく制限されている。おそらくそれが、人口の増加に歯止めをかけていたと考えられる。
封建制においては、人は、生まれた土地から離れることができない。一生その土地で暮らすしかない。そうすると、自分の畑の収穫量で養える人数しか、生きていけないことは明らかである。それが分かっているので、むやみに人口が増えることはない。
一方で、移動の自由が認められていれば、ここで食えなくても、よそに行けば食えるかもしれない、と考える者が出てくる。そうすると、人口の増加に歯止めがかからなくなる。つまり、自分の生産量で養える以上の人口を、生み出してしまうようになる。これが人口増加の原因なのではないか。
ゆえに、人口の増加を抑止するためには、移動の自由を厳しく制限する必要がある。
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さらに、人口の増加と温暖化の間には、もう一つ因果関係があるのかもしれない。
人口が増えると、二酸化炭素が増加し、温室効果が強くなる。温室効果が強くなると、地球の気温が上昇する。気温が上昇すると、作物の生育が良くなり、収穫量が増える。作物の収穫量が増えると、さらに人口が増える。ここには、正のフィードバックが働いているのではないか。
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江戸時代の日本でも、諸国を自由に行き来できる人々がいた。雲水である。雲水は諸国を回って修行を続けるので、住職のように所帯を持つことはない。そういう人種には、移動の自由が認められていた。
つまり、子供を作る人間は土地に縛られ、移動の自由は認められない。一方で、子供を作らない人間には、移動の自由が認められる。これは最も合理的なシステムではないだろうか。
<参考>
地球温暖化について