バイデンの火遊び

アメリカ合衆国第46代大統領ジョー・バイデンは、2009年から2017年まで同国の副大統領を務めていた。彼はその間に6度もウクライナを訪問している。

バイデンはウクライナのNATO加盟を支持した。また、2014年のロシアによるクリミア併合の後には、対戦車ミサイル「ジャベリン」の供与を提案した。2021年10月、ウクライナに180基のジャベリンが配備されると、ロシア軍は国境付近に10万人を動員し、ウクライナを威嚇した。

プーチンはNATOの東方拡大を警戒していた。バイデンはそれを知りながら、ウクライナにNATO加盟を促し、ロシアとの対立を煽った。そして2022年2月に戦争が始まった。

もしも、アメリカがウクライナのNATO加盟を断固拒否していれば、戦争は起きなかっただろう。実際には、バイデンはウクライナをたきつけ、NATO加盟へ向かわせた。アメリカのそうした動きがロシアを挑発し、ウクライナへの軍事侵攻を行わせた。ゆえに、この戦争の原因を作ったのはアメリカだと言える。

この意見に対して、次のような反論がありうる。

Q.

ウクライナ人は自由意志によってNATO加盟を望んだのであり、アメリカに責任はない。

A.

NATO加盟の可否は既存の加盟国によって判断されるものであるから、もっとも強い発言力を持つアメリカがNOと言えば、ウクライナのNATO加盟はありえなかったはずである。そのアメリカの意思がロシアに伝われば、戦争は回避されただろう。

Q.

だが、2014年以前のウクライナでは、政府による民衆の弾圧が行われていた。独裁政権に苦しむウクライナ市民を支援するのはアメリカの義務であり、EUやNATOへの加盟を後押ししたのも、ひとえにウクライナ市民のためである。ゆえに、アメリカに責任はない。

A.

たとえ人道的な理由があったとしても、ウクライナのNATO加盟への動きがロシアを刺激し、戦争の引き金となったのは事実である。ゆえに、アメリカに責任がないとは言えない。アメリカはウクライナのNATO加盟を拒絶し、ロシアとの間に緩衝地帯を設けることもできたはずである。

なぜ、アメリカはそうしなかったのか。なぜ、バイデンはロシアへの挑発を続けたのか。

ひとつには、ロシアが気に入らないので、弱体化させたかった。ふたつには、もし戦争が起きれば、アメリカはウクライナに兵器を供与することになるので、軍需産業が潤う。アメリカにとって戦争は景気対策である。ほかに、戦争によるインフレがアメリカ経済を刺激してくれる可能性もあった。

以上のような理由から、バイデンは戦争に踏み切った。いや、踏み切ったというより、戦争になっても構わないと考えていたのだろう。

もしも、ロシアがアメリカの挑発に応じなければ、アメリカの勝ちである。アメリカはウクライナをNATOに加盟させ、ロシアの勢力圏を圧迫することができる。

一方で、ロシアが挑発にのってウクライナに攻めてきたとしても、アメリカは痛くも痒くもない。なぜならば、殺されるのはウクライナ人であり、アメリカ国民ではないからだ。ウクライナ人の命でロシアを弱体化させられるのだから、アメリカにとっては得しかない。

戦争になればなったで構わないし、ならなかったら儲けものである。そのような軽い火遊びがウクライナ人の命を奪った。

ウクライナ人はよく考えるべきである。ヤヌコヴィッチ政権によってどれだけの市民が殺されたのか。その独裁者を追放するために頼ったアメリカが、ウクライナをロシアとの戦争に突き落とした。この戦争によって、どれだけのウクライナ人が死んだのか。はたしてそれは、独裁者を追放する代償として正当だったのか。

帝国主義の衝突

以上の考察から、アメリカは何ら長期的な見通しや戦略を持たずに、なんとなくウクライナ戦争の引き金を引いたことが分かる。なぜこのようなことが可能なのだろうか。

ポイントは、NATOに意思決定能力がないことである。NATOは集団的自衛権を実現するための軍事同盟であり、加盟国が条約を順守することで成り立っている。ゆえに、条約の範囲内であれば何をしようが各国の自由であり、統一された意思があるわけではない。

しかしながら、NATOの軍事力は世界最大であり、非加盟国はその力を恐れざるをえない。ゆえに、多くの国がNATOにすり寄ろうとするが、それを許可するかどうかは加盟国の合議で決まることになっている。ウクライナがNATOへの加盟を望むのはウクライナの自由であり、それを認めるのも認めないのも各国の自由である。

もちろんそれは建前で、実際にはアメリカがすべてを決定している。合議制のNATOを隠れ蓑として、アメリカは思うままにその権力を振るっているのだ。

暗黙の了解として、アメリカは善意で動くことになっている。その前提を認めなければ、サロンに入れてもらえない。そして、その前提を認めれば、アメリカを非難することはできなくなる。

NATOを擁護する人が見落としている点は、それが世界最大の軍事力だということである。その暴力への恐怖が人類を縛っている。

NATOはもともと、共産主義陣営に対抗するために作られた軍事同盟であった。しかし、ソ連が崩壊した後も存在を続けたことによって、その性格は大きく変化していった。

いまもNATOが続いているのは、加盟国がその力から逃れられなくなったせいである。NATOは自己の力を維持し、それを拡大させるためだけに存在している。これを帝国主義という。

NATOの帝国主義とロシアの帝国主義がウクライナで衝突した。それがこの戦争の本質である。

ロシアの帝国主義が善であるか、それともNATOの帝国主義が善であるか、という二者択一に意味はない。なぜならば、どちらも悪だからである。

私はロシアを擁護するつもりはないし、NATOを擁護するつもりもない。ただ、日本がNATOに追随している現状には警鐘を鳴らしたい。

NATOが進む道には地獄しかない。暴力による支配はさらなる暴力を生むだけだ。我々はこの地獄行きの船から降りねばならない。そして、自分たちの道を探すのだ。

台湾有事

アメリカのウクライナ戦争への関与の仕方を見て、多くの日本人は不安を感じている。

台湾有事に対しても、アメリカは同じような態度をとるのではないか。アメリカは中国を挑発し、戦争の引き金を引いておきながら、兵隊を出さずに、台湾への武器支援だけを行う。当然日本もその戦渦に巻き込まれるが、アメリカは本当に日本を守ってくれるのだろうか、と。

我々は、アメリカが日本を守ってくれることを期待してはいけない。アメリカ軍はアメリカのために存在する。つまり、彼らが日本に協力するのは、それがアメリカの利益になる限りにおいてである。これ以上日本を支援してもアメリカの利益にならないと判断すれば、彼らは日本を見捨てるだろう。

したがって、我々は自力で日本を守らねばならない。では、その方法は。

我々はまず、自衛隊を実践的な部隊にしなければならない。日本の場合、それは上陸作戦が可能な軍隊を意味する。上陸作戦もできないのに戦争をしようなど、寝言を言っているようなものである。

たとえば、太平洋戦争中の沖縄戦では、民間人15万人が死亡し、住民の3割が命を落とした。一方、本土空襲の犠牲者は約40万人であった。当時の日本の人口は1億弱であるから、空襲の犠牲となったのは総人口の1%以下である。

我々はここから、大都市への空襲よりも地上戦を恐れるべきだという教訓を得る。地上戦は空襲に比べて、人口に対する犠牲者の比率が大きくなるのである。では、どうすれば地上戦を回避することができるのか。

仮に、中国軍が日本に攻めてくることになれば、日本の国土が戦場になり、多くの国民が命を失う可能性がある。しかし、もしも自衛隊が中国に攻め込むならば、戦場になるのは中国であり、犠牲となるのは中国人である。よって、国民の命を守ることを第一に考えるならば、こちらから中国に攻め込んだほうがよい、ということになる。

戦争とは人を殺すことであるから、必ず誰かが死ななければならない。それを中国人にするか、日本人にするか、どちらがよいかといえば、我々としては中国人に死んでもらうしかない。

したがって、いま自衛隊に必要なものは強襲揚陸艇である。300人乗りの船を1000艇ほど用意すれば、形は整うだろう。自衛隊は上陸作戦の訓練を入念に行い、いつでも中国に攻め込める態勢を作る。それが中国に対する牽制になる。

具体的な作戦方針としては、自衛隊は台湾軍と協力して、台湾対岸の福建省か浙江省から上陸する。そこからまず上海を目指し、これを攻略する。次に南京、そして武漢へと進む。武漢は地政学的に重要な位置にあるので、ここを最初の目標にすべきだと思う。

この作戦と同時に、自衛隊の別動隊が韓国に上陸する。彼らは韓国軍と協力して北朝鮮を突破し、北京を攻略する。北朝鮮を抜ければ、北京は目と鼻の先である。ゆえに、中国は北朝鮮を失うわけにはいかないし、我々としても北朝鮮を落とすならば、中国を同時に落とす覚悟が必要である。

北朝鮮には無血開城を期待する。その場合、金一族には金日成の霊を祭る神社の神主になってもらい、一定の身分を保証する。社稷を祭ることを認め、抵抗の意志を削ぐのである。逆に、あくまでも抵抗をするならば、アメリカ軍に断首作戦を実行してもらう。そうして北朝鮮を潰してから、北京に進撃する。

ひとつ懸念があるとすれば、自衛隊が戦端を開いた場合、アメリカが参戦を渋る可能性がある。ゆえに、柳条湖事件のような工作を行う必要があるかもしれない。アメリカにはすぐにばれるだろうが、彼らが戦争に前向きであれば、このやらせに乗っかってくれるだろう。あるいはイラク戦争の時のように、向こうで理由をつけてくれるかもしれない。いずれにせよ、この点には注意が必要である。

さて、首尾よく北京と武漢を制圧できたならば、こちら側の優位が確立する。ここで我々はひとつの演出を行う。紫禁城の大広間で、天皇陛下が中国皇帝に即位する儀式を行い、その様子を全世界に動画配信するのである。

当然この式には台湾総統にも参加してもらう。中華民国総統が天皇に禅譲を行い、天皇が皇帝に即位するという形式をとる。そして、天皇が中国を直接統治するという宣言を行い、既成事実を作る。これは共産党にとって大きなダメージとなるだろう。

これらの作戦と同時に、チベットの制圧を進めてもいいかもしれない。いまはチベットまで高速道路が通じているようだから、武漢を素通りしてチベットまで進み、これを武力制圧して、チベットの独立を宣言する。そうすれば、共産党に抑圧された少数民族を解放する、という大義が立つ。これもひとつの案である。

もちろん、このような作戦を実際に行う必要はない。ただ、こういう準備が日本にはありますよ、ということを示せば、中国も迂闊なことはできなくなる。中国軍がおかしな動きをすれば、自衛隊が中国に攻め込む口実を作ってしまうかもしれないからだ。そして、こうした準備を進めるならば、我々にも戦争を始める覚悟が必要となる。

まだ気付いていない人がいるかもしれないが、現代は戦国時代である。

不戦条約は結局、国家間の恣意的な取り決めにすぎない。戦争をするかしないかを決めるのは主権国家の権利であり、誰も口出しできないのだ。ゆえに、現代社会では戦争状態が基本であり、すべての国はいつ戦争に巻き込まれてもおかしくない。客観的に見れば、これは戦国時代の特徴である。

戦国時代を終わらせるためには、天下を統一しなければならない。世界をまとめて一つの国を作ることで、平和な時代がやってくる。

我々は世界政府を作る。世界政府は、あらゆる人間が従うべき普遍的な法を作り、その法を実行する。ひとつの秩序が世界全体を覆い尽くすことで、はじめて恒久的な平和が実現される。

我々はこの時代を生き抜き、新しい時代を切り開かねばならない。そのためには力が必要である。暴力に怯えるだけでは平和は実現できないし、暴力のとりことなれば身の破滅はまぬがれない。

あらゆる選択肢は戦争に通じている。その中でただ一つだけ、平和に通じる道がある。それはか細い一本道である。その道を踏み外さないよう、どれだけ注意しても足りない。

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